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日本の水が飲みたい=広橋勝造

連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(10)

ニッケイ新聞 2013年9月25日 「ふ〜ん、今時めずらしー。しかし、なんであんな所に飾ってあるんだ?」 【買ったはいいが、置き場所がなくてあそこに放置したんだ。ところが意外な事に、それ以来、店が面白いほど繁盛し、前からある七福神と競って店を盛り上げているそうだ。料理はともかく、神ダノミで繁盛する食堂は世界でもあそこしかないだろ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(11)

ニッケイ新聞 2013年9月26日 【なに野暮な事を・・・、俺達一世に悪者がいるはずないだろう! 詳しくは邦字新聞に載っているがね】 「カンジが読めるだけで優越感持ち、悪い事は全て二世だと人種差別しやがって・・・、一世のヤボ記者」 【なんだとー! 俺が野暮記者なら、お前はヘボ刑事だ! だからブラジルは検挙率十五パーセントの犯罪蔓 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(12)

ニッケイ新聞 2013年9月27日 【会長さんは、東洋街の桜並木が日本帝国時代の象徴だと拗ねる中国人を説得しに行っておられますので・・・・・・、どなた様でしょうか?】 「ジョージとイイます。実は、ミヤギケンジンの方を探しているんですが、その件で調べていただこうと・・・」 【ちょっとお待ち下さい】二十秒ほど待たされた。 【代わりま ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(13)

ニッケイ新聞 2013年9月28日 「で、そのボーズさんは、今、そのお寺に?」 「この手紙の差出人住所がローランジアの石塚さん宅ですから、そこに間借りしておられるみたいですね。ローランジアの宮城県人会に問合せてみましょう」 「それで、分かりますか?」 「サンパウロやパラナ州では、十万人規模の町にはたいてい県人会の支部が設けられて ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=第一章 旅僧  

  ニッケイ新聞 2013年9月12日    二〇〇七年五月十日、成田発サンパウロ直行JAN045便は、東の空に朝の気配が迫るサンパウロ国際空港に、時間通り到着した。  大きなジャンボ機は所定の第一ターミナルに機体を寄せると、朝の静けさを破ってかん高く唸る四機のエンジンを次々と切って、二十六時間に及ぶ長旅で疲れた乗客に、あたかも ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(2)  

  ニッケイ新聞 2013年9月13日    そのサイドミラーにボーズと路肩の潅木から飛び出す数人の男が写った。明らかにボーズを襲おうとする強盗だと判断したジョージは咄嗟に後続車との安全を確認しながら車を道路脇に寄せ、急停止し、『なにが起こったのか?』と心配顔の日本人達に、 「ちょっとお待ちください! 人を拾いますので」  その ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(3)  

  ニッケイ新聞 2013年9月14日   「どうぞ」と言いながら、ジョージの目は強盗達が逃げ込んだ潅木を睨んでいた。 「ありがとうございます。・・・」ボーズは、まだ少し震える手で合掌して、やっとジョージの指示に従った。  ジョージは、拳銃をズボンのバンドにさし込み、ボーズが引いたトランクを手早く車に詰め込みながら、 「バッグの ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(4)  

  ニッケイ新聞 2013年9月17日   「俺も昔、刑事時代に・・・」 「麻薬経験者か・・・」とブラジル在住の日本人が見下げる様に言った。  救われた旅僧が話題を変えるかのように、 「貴方が救って下さらなかったら、今頃どうなっていたか・・・」 「しかし、『お金を渡した』なんて、よく機転が利きましたね」 「観音さまの思し召しのま ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(5)  

  ニッケイ新聞 2013年9月18日   「後で見せて下さい。そこへお連れしますから」  助手席のチャッカリ男が、後部座席に向って、自ら出した百ドル札を見せ、 「和尚さんがスッテンテンだ、皆で助けようじゃねーか」  この呼び掛けに、 「遠いブラジルまで来て下さった和尚さんだ、何とかしなくちゃー」 皆が快く賛同し、五百ドル近くが ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(6)  

  ニッケイ新聞 2013年9月19日   「仏さまがお誓いをなされるのですね?」 「はい、自分の役割を宣言されるようなもので、ほとんどの仏様が『誓願』をお立てです。すべての『菩薩』さまに共通する誓いを『総願』と云い、それに対し個別に、例えば『薬師如来』さまの『十二願』、『阿弥陀如来』さまの『四十八願』、『お釈迦』さまの『五百大 ...

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