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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩

 著書『ブラジル日系社会 百年の水流』(改訂版も)で有名な外山脩氏がこの文章を書いた経緯は、本紙6面に2月26日から4回にわたって連載された「移民百年史出版プロジェクト 唖然、無責任極まる執行部」に書かれた通り。今回はそれを掲載することで、『百年史』に値する内容かどうか、実際に読者に評価を委ねようというもの。「日伯のナショナリズム」と「勝ち負け騒動」の深い関係を、徹底した取材に裏打ちされた、歴史や社会を見通す視野から論じている。(編集部)

第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(34)

ニッケイ新聞 2013年6月29日 「 四月六日 モスコー五日電で日ソ中立条約は継続されざることが…(略)…。日本では小磯内閣が辞職して鈴木カン太郎大将が…(略)…チト面白くない成り行きだ。…(略)…まだまだ無敵艦隊も健在である筈だ」(無敵艦隊は、とっくの昔に無くなっていた) 「四月二十二日 鈴木内閣を和平内閣と見る日本人インテ ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(18)

ニッケイ新聞 2013年6月7日  迫害(Ⅰ)  日本軍の戦況と共に、邦人たちが神経を尖らせていた関心事が、迫害であった。敵性国民となった自分たちに、この国の官憲や報道機関、民衆から、どの様な迫害があるか判らなかったからだ。  国交断絶から4日後の1942年2月2日、サンパウロ市内の日本人街、通称コンデ街の住民の一部に、突如、一 ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(19)

ニッケイ新聞 2013年6月8日  話は少し変わる。ブラジルは枢軸国との国交を断絶しただけで、宣戦を布告したわけではなかった。が、2月、ニューヨークに近づきつつあったブラジルの商船がドイツの潜水艦に撃沈された。以後、大西洋上で同じ事件が続いた。ドイツ潜水艦は米国への軍需物資の輸出阻止を目的として攻撃していた。  無論、多数の死者 ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(22)

ニッケイ新聞 2013年6月13日  橋本自身、夜、家に石を投げられたり、昼間は「オー、ジャポネス……云々」とブラジル人に罵(ののし)られたこともある。「私と近所の佐藤さん、国井さん、あと二人、警察へ引っ張られたこともあります」という。よその日本人の家が押し入られ、モノを奪われたという噂(うわさ)も耳にした。  マリリアの郊外の ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(23)

ニッケイ新聞 2013年6月14日  8月21日、サンパウロで、宮腰千葉太(前海興支店長)ら、邦人社会の著名人多数が拘引・拘留された。警察の話では、同じ日本人の密告であったという。  8月22日、遂に、ブラジル政府がドイツ、イタリアに宣戦布告をした。  9月17日、パラナ州南部パラナグア港アントニーナ付近一帯の枢軸国人(主に日独 ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(24)

ニッケイ新聞 2013年6月15日  榛葉は、宮内省勤務の弟がいるだけであり、警視総監の兄弟などいなかった。スパイ行為も全くなかった。が、逮捕後ここに5カ月留置され、リオのイーリャ・ダス・フローレスに送られて9カ月、再びここに戻されていた。  5号室には、児玉満という青年もいた。児玉は数カ月前、マリリアからサンパウロへ出てきて、 ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(25)

ニッケイ新聞 2013年6月18日 サントス追い立て  1943年の7月8日、サントス市内の枢軸国人に、突如、立ち退き命令が下った。  なお、ここで枢軸国人と記したが、資料類は日独人と記しイタリア人を外しているものもある。もともと、イタリア人は比較的、寛大に扱われていた。  立ち退き命令が出たのは、その直前、ブラジルとアメリカの ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(26)

ニッケイ新聞 2013年6月19日  こういうこともあった。ほぼ同時期、サントス─ジュキア線ペドロ・デ・トレード駅の前のバール(簡易飲食店)で、邦人4人が一杯やっていた。内一人が不用意に「ブラジルの船が沈んだ祝いをやろう」と口を滑らした。  この会話を聞いていた人間がいて、後で警察に通報した。スパイの嫌疑をかけられ、話した当人は ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(27)=悪質な警官を翻弄

ニッケイ新聞 2013年6月20日  岸本書によると、日本人とみて迫害しようとする悪質な警官を、逆に翻弄(ほんろう)した、という話もある。  ある日の夜、サンパウロのピニェイロスのバールで、7人ほどの日本人が他の客に混じって玉突きをしたり、カフェーを飲んだりしていた。その店の前を行ったり来たりして中を睨(にら)んでいた顔の角ばっ ...

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第2次大戦と日本移民=勝ち負け騒動の真相探る=外山 脩=(28)

ニッケイ新聞 2013年6月21日  以下、再び憩の園の聞き取り調査より。 ▼男性Y「サンパウロに居ましたが、禁足されたくらいで、幸せな方でした。戦争のために苛められたことはありません。ただ、カデイア(留置場)に入れられなかったのは、近所でも、私と他2、3人でしたネ」 ▼女性A「リオに居ました。そんなに酷い目には遭わなかったです ...

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