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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲

『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(10)

初期の移民が住んでいたパウミット小屋。椰子の割って板状にして作った(『棉作王 松原武雄』54頁)

 ブーグレのカフェーの育ちぶり、繁茂ぶりは素晴らしかった。ここの土は特に肥沃で、40年間、無肥料で持った──という伝説すらある。バルボーザは、このファゼンダに惜しみなく大金を注ぎ込んだ。セーデ(本部)には大邸宅、巨大な乾燥場や倉庫を建てた。原始林10アルケーレスを柵で囲い、種々の動物を放った。庭には栽培可能なあらゆる果樹を植えた ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(9)

 ともかく、北パラナのテーラ・ロッシァでのカフェー栽培は、無肥料で25年から30年続けることができた。カフェー樹一本当たりの収穫量も他州とは比較にならぬほど多かった。これは別の作物も同じだった。 なお、中西周甫著『北パラナ国際植民地開拓十五年史』によると、地理的には、北パラナとはカンバラーからイヴァイ河に至る長さ500キロ、幅1 ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(8)

 一章  カンバラー カフェーは血であり命であった 往年、カフェーはブラジルを支えていた。国内で流通する貨幣の殆どは直接・間接にカフェーと関連して動いていた。それを見事に表現する名言があった。こうである。 「カフェーは、ブラジルの血であり、命ですらある」 広大なカフェザールを経営するファゼンデイロの懐には、黄金が流れ込んだ。カフ ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(7)

 『百年の水流』は、勝ち負け抗争以外の記事ではコチア、スール、南銀の落城の内幕を紹介したことに関し、多くの読者から「これでよく判った」という謝辞が寄せられた。この落城では、莫大な損害を受けたり人生を狂わせたりした人が無数に発生した。しかし何故落城したかについて、得心の行く説明が当事者からなかった。 せめて、それを知りたい──とい ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(6)=産経新聞も移民史修正問う

産経新聞2014年6月15日付け

 こういう簡単な──小学生でも知っていることも混じっている──基礎的な事実すら間違えていて、歴史研究などできる筈はない。 しかも、このピンチ・ヒッター氏の記事は誤字、単純な事実の間違い、助詞の誤用、意味不明の文章……が続々と出てくる。筆者は数えてみたが、60カ所を越した処で疲れて止めてしまった。誤植や勘違いによる間違いは──筆者 ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(5)

日本のあちこちのメディアで勝ち負け関連の歴史見直し報道が行なわれた

 後に筆者が、そのヘマを犯した当人に「彼は歴史研究家ではありませんヨ」と言うと、否定はせず、微かに頷きながら、後悔の色を表情に浮かべていた。その表情から(すでに、ほかの人からも、同じ忠告を受けたナ)という印象を受けたので深追いは避けた。 歴史研究というものは時間をかけ、関係者の証言や無数の「事実」の断片を丹念に探し求め、裏付けを ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(4)=抗争の印象は軌道修正へ

 また奥原氏は、臣道連盟や勝ち組の人々が受けた迫害を、州の真相究明委員会に持ち込んだ。その結果、州議会で公聴会が開催され、委員会が、被害者と日系社会に謝罪するという成果があがった。 さらに、6月6日、旧DOPSの本部を改装したメモリアル・レジステンシアで行われた『闇の一日』の上映会では、感嘆すべき出来事があった。脇山大佐の親族で ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(3)=内山主幹「通説が問題だな」

 「アンシエッタ島の刑務所へ送られたではないか。それが、有罪判決が出た証拠」と反論する人も居るであろう。が、これは、その刑務所を臨時に拘置所代わりに使用したものであり、収監・服役ではない。(襲撃実行者は無論、起訴され、有罪判決を受け、受刑した) 勝ち負け抗争では、無実の数千人が拘引され、その相当数が虐待・拷問を受けた。後遺症に苦 ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(2)=有罪判決なき臣聯幹部拘束

 反響から判断すると、まず勝ち組・負け組抗争の真相を発掘したことが良かったようである。この抗争は、それが発生してから(『百年の水流』出版の時点で)60年余、日系社会でもブラジル人の間でも、さらに日本でも――、 「第二次世界大戦の終戦直後、日本の勝利を頑なに信じるバカが多数現れた。彼らは狂信者である。勝ち組と呼ばれる。一方、冷静に ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(1)=多く方々からの助力に感謝

『百年の水流』の表紙

  前書き  まったく歳月の過ぎ去るのは早いもので、2006年の暮れ、拙著『百年の水流』を出版して以来、すでに10年近くになる。この本は、その数年前にサンパウロ新聞に連載した記事を推敲、新材料を多数盛り込んで作成した。この国の日系社会の一世紀の歴史の「流れ」を捉えることが、主たる目的であった。ポルトガル語版や改訂版を出すこともで ...

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