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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲

『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(49)

西村組の西村市助

 西村は、仁王に似た体格の持ち主で、破(われ)鐘の様な声で人を使った。一方で可愛がった。それについては、彼の下で働いていた勝田卯太郎の話が、文字になって残っている。それによると──。 最初、西村が勝田たちを連れ、現地入りした折のことである。この時は鉄道がジャタイまで通じていたので、汽車でそこまで行き、迎えに来ていた斉藤と落ち合っ ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(48)

1933年の予定市街地。鉄槌の音があちこちに響き始め、板小屋が立ち始めた(『トレスバラス移住地五十年史』8頁)

 次いで、もう一カ所、候補となったのがトゥレス・バーラスであった。当時、北パラナは豊饒な大地が無限に広がる開発前線として、世の関心を惹き付けていた。梅谷は興味を抱いたが、日本へ帰国の日時が迫っていた。ために後を武石に任せた……と、そういう経緯で、前記の現地入りとなったわけである。 武石の調査の後、連合会はこの土地を購入した。面積 ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=(47)

 五章 アサイ三本の金塊 その昔、北パラナに「トゥレス・バーラス」という名の、かなり広い私有地があった。といっても、1930年代の初めまでは、ここも、やはり原始林であったが……。 2015年現在、その大半が「ムニシピオ・アサイ」となっている。アサイ市と訳されるが、人口は一万数千というから、日本語の感覚では、町に近い。丘の上に市街 ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(47)

カフェー・ソルーベル・イグアスー社の工場

窓外に見る企業の浮沈 先に記したカフェー・ソルーベル・イグアスー社の工場は、2015年現在、操業開始以来、40年以上になる。 筆者は、何度か、その工場の傍を車で通ったが、その威容が周辺を圧倒している様に感じた。同社の製品は国内・国外に広く市場を確保、盛業中と聞く。 同社工場のイナウグラソンの2年後の1973年、日本のカネボウ・シ ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(46)

往事茫々 斉の息子の宮本ミノルは1962年、下院議員に当選したが、1978年の選挙で落選、以後、政界復帰をすることはなく、他界した。 1973年、コルネーリオ・プロコッピオの市長になった邦弘の息子ネルソン氏は、当時28歳の若さで、将来を嘱望された。が、任期途中で降板した。 宮本邦弘家の不幸は長く尾を引いた。昔、連邦警察で活躍した ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(45)

北パラナの地図

 1960年代後半、筆者が邦字紙の新米記者をしていた頃、邦弘はサンパウロ市内にも事務所を置き、様々な事業に関わり、幾つかの団体の役員を務めていた。 人から聞いたことだが、自家用の飛行機で飛び回っており「サンパウロがフェシャードで、降りられなかった」などという会話を日常的にしていた。霧がかかって着陸できなかった、という意味である。 ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(44)

カフェ・イグアスーの工場

 こういう話もあった。正月、斉の配下たちが、農場のセーデ(本部)で新年会を開いていた。そこにカマラーダが乗り込んで着て、仲間に入れろと暴れ出した。それを小山田という男が、鞭で叩きのめした。カマラーダは逃げたが、すぐ仲間を大勢連れてきて、セーデを取り囲んだ。その数が忽ち膨れ上がり危機が迫った。そこへ斉がピストルをパンパン鳴らしなが ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(43)

博打と拳銃 ところが、この斉、町では博打ばかりしていた。70コントス負け、兄から貰った20アルケーレスの土地を渡してしまった。後年のことになるが、サントスへ行って400コントス負けたことがある。が、顔色一つ変えず小切手を切った。相手の方がオロオロしてしまった。もっとも一方で、1千コントスで買ったカフェザールを、右から左へ倍額で売 ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(42)

 このアルマゼンについては、本稿では、すでに何度かふれた。浩は、ここから余り遠くないアグア・リンパの安瀬盛次と、ほぼ同時期、この商売を始めている。 当時、このプロミッソン地方には、植民地が多数でき、邦人が続々と入植していた。これが成功の主因であった。浩は、アルマゼンの他、自動車と石油の販売代理店、製材所、煉瓦工場を経営、道路建設 ...

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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=外山脩=(41)

造成中の後宮農場

 労働法問題、強盗 1960年代の末以降、この国の何処でも、農場主は労働法問題に苦しめられた。 弁護士たちが農村労働法を道具に、労務者を唆して雇用主を告訴させた。裁判は、殆ど原告の勝訴となった。被告は過重な負担となる支払いを命じられ、止む無く土地を売って清算した。 後宮農場には100人以上の労務者がいた。300アルケーレスの土地 ...

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