連載
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(10)
世界一! ここで、一寸と話は飛ぶが――。 この国の日系コロニアで政治、経済、文化、スポーツその他いかなる分野でもよいから〝世界一〟の折り紙をつけられる対象があるだろうか……といった類のことは、筆者
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(9)
連合会幹部、更迭 前項までに記した様な乱れに併行、移住地経営上の一大齟齬が生じていた。日本からの入植者が、毎年200家族の計画に対し、実績は1929年は既述の様に64家族、1930年は23家族、31
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(8)
乱れに乱れる 移住地の乱れは、1930年に入ると、一段と激しくなった。 2月、畑中は入植者二人を移住地から追放した。この二人はブラ拓事務所へ盾突き続けていた。 詳細については資料を欠くが、相当荒
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(7)
反故にされた〝県移住地〟 入植早々からのバストス移住地の乱れには、もう一つ大きな種があった。 入植者が日本出発前に移住組合で聞いた話では「バストス移住地を、県単位で幾つかの移住地に分割する。鹿児島
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(6)
不平・不満が百出… 1929年、バストス移住地は6月以降、数回に分けて、日本から入植者を迎え入れた。ところが、200家族の計画に対し、年末までに到着したのは64家族に過ぎなかった。しかも彼らは、日本
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(5)
不吉な兆し 連合会の移住地用の土地選定は、無理を犯して始めたが、やはり端(はな)から問題を孕んでいた。地質である。バストス移住地の土は、粒子が大きくて保水力が弱く、作物に必要な栄養分が流れてしまう砂
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(4)
国策移住地、第一号 日本の対ブラジル移植民事業は――本稿の第三部で記したことだが――最初から試行錯誤を続けた。水野龍のカフェー園移民、青柳郁太郎の植民地移民…と。 その教訓から次に案出されたのが「
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(3)
悲しき習性 地域の日系住民が――自分たちが狙われていることは判っているのに――団結して強盗に対する自衛策をとらない…という摩訶不思議な現象は、バストスに限らず何処でも起きた…あるいは起きていることで
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(2)
バストスで起きた強盗事件は、例えば次の様な具合だった。 ━━日本(出稼ぎ)から帰ってくると、翌日には強盗が、その家にやってくる。 強盗に殴られたショックで、入れ歯を呑み込んでしまい、死んだ人もいた
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『百年の水流』開発前線編 第四部=ドラマの町バストス=外山 脩=(1)
強盗の首領を一発で… 「…2年ほど前のことだ。日系のモッソが強盗の首領を一発で斃した。 その日の夜明け前、ある農家を4人組の強盗が襲った。そこの息子サトシが父親と早朝、母屋の前に在る牛舎へ乳搾りに行