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コーヒー 関連記事

実録小説=勝ち組=かんばら ひろし=(1)

 ブラジルの空は高く、青く澄んでいた。白地に赤も鮮やかに、日の丸の旗がはためいていた。 ピュ、ヒューン 澄んだ空気を切り裂いて弾丸が飛んだ。「正吉、勝次、伏せろ。窓から顔を出すじゃねえぞ」。源吉はあらためてウインチェスター連発銃を握りなおした。「やい腰抜け度も、一歩でも俺の屋敷内に踏み込んでみろ、この鉛弾をドテッ腹にぶち込んでや ...

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日本移民108周年記念=囚人の署名 平リカルド著 (翻訳)栗原章子=(33)

 一人の二世(日本人の子弟)が彼とすれ違い、行儀よくお辞儀をした。彼もそれに応えてちょっと頭を下げた。若い二世は兵役中のようで、士官候補生の軍服を着ていた。 その姿を見て、兵譽は過去の恨みなど払拭して、新しい時代を生きている人々を目の当たりにして、感慨深かった。リオでは日本人の植民地もなく、そういった時代の移り変わりも感じること ...

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日本移民108周年記念=囚人の署名 平リカルド著 (翻訳)栗原章子=(32)

 パウリスタ鉄道の列車はリオからの電車サンタクルス号のように快適な旅が楽しめる代物ではなかった。一等車だけが快適につくられていたが、一両か多くても2両の車両しかなかった。ほとんどの車両は木製で、道中あまり揺れなくても、自然と首や肩が痛くなるのだった。 兵譽はジュリオ・プレステス駅まで歩いて行くことにした。映画館、レストラン、床屋 ...

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日本移民108周年記念=囚人の署名 平リカルド著 (翻訳)栗原章子=(30)

 兵譽(へいたか)の新しい住家となったドゥッケ・デ・カシアスの家を、エレオマルは退職金で買ったのだ。兵譽はこの友人の家に温かく迎え入れられた。それは何故このように温かく自分の世話するのかと不思議に思えるほどであった。 三十八歳になっていた移民の兵譽は、早く食い扶持を探さなければという義務感を感じるようになった。物書きになる夢を捨 ...

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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(39)

 二人が降りると、待ち受けていた一人がうやうやしく、「さあ、こちらへ。お荷物は事務所にお届けして置きますから」と、まるで5つ星ホテルでボーイさんから丁重に扱われているような歓迎を受けた。 エレベータで十二階の事務室へはいった所で、女性事務員が「どうぞ、こちらへ」と先導してくれ、応接室のドアをノックした。中から「どうぞ」との声。  ...

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日本移民108周年記念=囚人の署名 平リカルド著 (翻訳)栗原章子=(29)

 マツモトは長年にわたり苦しんでいたのだが、末娘が長患いの後に死んでからは、働かなくなり、エスタソン広場の店に借金を重ねていた。借金を払うことを執拗に迫られ、また、脅迫もされ、マツモトは借金を取立てる店主とそれを止めようとした店に居合わせた二人の客を殺してしまったのだ。 彼は逮捕され、拷問を受け、もよりの警察署の小さな牢屋に投げ ...

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日本移民108周年記念=囚人の署名 平リカルド著 (翻訳)栗原章子=(28)

平英新

 ジーン・ルッセルやリタ・へイワースといった上品な女優に魅せられていた。その頃の女性はハリウッド女優の髪型に憧れ、同じような髪型をしたがっていたのを知り、英新は理容師の勉強を始めることを思いついたのだ。 リベルダーデ区の理容師協会に申し込み、ウェーラ美容製品社の講座も受け、その後、すぐ彼は美容師として働き始め、ベレン区のカツンビ ...

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リオデジャネイロ五輪=マリンガ 園尾彬 

 最近の日本の報道を見ていると、リオ五輪を「リオでじゃねえよ」というような冗談で、ことさらに「開催危うし」また「リオは犯罪都市で危険」というニュースが多いように思われます。私のようにブラジルに帰化し、当地で生活する日系人としては非常に残念な思いに駆られます。 移住2年後、兄のコーヒー園から4キロ程離れたマリンガ市の小学校の夜間授 ...

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自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(35)

 結果は、最初から解かっていた通り、万事休す。一時、お先き真っ暗に。これも自業自得の定めかと、サー、何とする。農家に支払うお金はゼロであり、品物の仕入れも完全にストップ。打つ手なしのこのままでは、帰るところもなし。 「ままよ」と、とりあえずコーヒー一杯。 俺の人生もこれまでかと、あるバールにふらりと這入った。気付くと奥のカウンタ ...

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日本移民108周年記念=囚人の署名 平リカルド著 (翻訳)栗原章子=(26)

第8章  恩赦 戦争が幕を閉じる前後から、ブラジルでは臣道連盟が活動しはじめた。臣道連盟は1945年に創立された組織で、一世(日本生まれの日本人)やその子孫でありながら、日本帝国への忠誠心を欠いたりした者に対して、暴力行為を実施していた。 戦争が終わると同時に、日本の敗戦を認める人々「負け組」と、「勝ち組」の強硬派は抗争をはじめ ...

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