ホーム | 連載 | 2004年 | 教科書 時代を映して変遷 | 教科書 時代を映して変遷(26)=「アンブレラ方式」支援=JICA、効率増進を検討

教科書 時代を映して変遷(26)=「アンブレラ方式」支援=JICA、効率増進を検討

5月20日(木)

 「アンブレラ方式」
 聞き慣れない言葉だが、国際協力機構(JICA)が現在、検討している支援の在り方だ。
 訪日研修や日本語教育団体への支援などを同じ傘(アンブレラ)の中に収め、事業間に密接なつながりを持たせていこうというのが、趣旨。調査団が六月初めに来伯、関係機関と調整する予定だ。
 個人的な見解として、小松雹玄JICAサンパウロ支所長は「簡単にいったら、効果を上げるために、見直しをやりましょうという意味です」と解説する。
     ◇
 日本政府の財政改革の一環で、旧国際協力事業団は独立行政法人化。〇三年十月に、国際協力機構に組織が改編された(横文字の名称は以前と同じJICA)。
 その結果、事業の(1)透明性(2)効率性(3)成果──などが要求されることになった。緊縮財政が迫られる中で、事業にメリハリをつけていかなければならないということだ。
 教師謝金は今年限りで廃止。相当額が今後、研修に振り分けられる見込み。小松支所長は「既に、一部は研修に回っています」と明かす。
 JICA日系日本語教師研修には基礎(1)、基礎(2)、応用、応用専門の四コースが設置されている。基礎(1)受講者の日本語能力がまちまちで、受入先が対応に苦慮することがある、とかねてから指摘されてきた。
 足並みをそろえるため、ブラジル日本語センター(谷広海理事長)の教師養成講座と連係させていきたい考えだ。さらに、応用専門で自身のテーマを追究してきたベテラン教師には、帰国後、養成講座の講師に就いてもらう。
 「有機的に結びつけることで、必ず良い結果がもたらされるはず」と小松支所長は太鼓判を押す。
     ◇
 「あなたたち、〃当事者〃じゃないでしょう」
 日本政府ばかりを頼りにする日系団体が目立つことに対して、小松支所長は厳しい口調で批判する。
 「事業計画案が何ら、定まっていないのに、ただ資金援助をくれとだけ言ってくるんですよ…」
 JICAが協力してくれなかったから、学校経営が破綻してしまったと筋違いな怒りをぶつけてくる人もいた。
 「サンパウロに赴任してきて、約二年半が経つ。でも、日系団体の姿勢はほとんど変わっていない感じがする」と意気消沈している様子。
 事業内容、予算、効果などをしっかり煮詰めた上で、相談を持ち込んでくるなら検討可能だということでもある。
 「JICAだけでなく、トヨタ財団とか、ほかからも協力を得やすいはず」
 ブラジルは南米では〃お兄さん〃の国。だからボリビア、パラグアイなども視野に入れた活動を展開させてほしいと、期待を寄せる。
 日系コロニアに対するJICAの役割について、質問を向けたところ、小松支所長は「ありません」ときっぱりいう。もちろん、額面通りの意味ではないが、自助努力をしてほしいという願いが込められている。つづく。
                                                 (古杉征己記者)

■教科書 時代を映して変遷(1)=教育勅語しっかり記憶=イタペセリカ 今も「奉安殿」保守
■教科書 時代を映して変遷(2)=国粋主義的思想〝植え付け〟=満州事変後の日語教育
■教科書 時代を映して変遷(3)=ヴァルガス政権発足で=日語教育は〝地下活動〟
■教科書 時代を映して変遷(4)=戦後に一、二世の〝亀裂〟=それでも日語教育は消えなかった
■教科書 時代を映して変遷(5)=人間教育を重要視=『松柏』の川村さん=「戦前の教科書に夢があった」
■教科書 時代を映して変遷(6)=いち早く日語教育理念=アンドウさん=〝コロニア向け〟の必要説く
■教科書 時代を映して変遷(7)=〝コロニア教科書〟作製しても=外国語教育令が足かせ
■教科書 時代を映して変遷(8)=科書時代を映して変遷=『日本語』8巻61年完成=翻訳して当局の検定受ける
■教科書 時代を映して変遷(9)=保護者の矛盾した意識=日本語教育は必要=教師月謝は上げぬ
■教科書 時代を映して変遷(10)=初訪日研修員がつくった=『にっぽんご かいわ』=2つのレベルで
■教科書 時代を映して変遷(11)=初訪日研修員がつくった=『にっぽんご かいわ』=2つのレベルで
■教科書 時代を映して変遷(12)=日伯文化普及会が産声=早い時期に認識=日本語教育は外国語教育
■教科書 時代を映して変遷(13)=日語学校の生存競争=激動90年代、学習者減る
■教科書 時代を映して変遷(14)=日本語能力低下に対処=文協が講座を開設
■教科書 時代を映して変遷(15)=高評価、よく売れる=橿本さんの『きそにほんご』
■教科書 時代を映して変遷(16)=視覚に訴えるテキスト=現代っ子のニーズに合わせて
■教科書 時代を映して変遷(17)=州立校では初の試み=レジストロ日本語が選択科目に
■教科書 時代を映して変遷(18)=USP日本語講座開設=客員教授ら文法入門を刊行
■教科書 時代を映して変遷(19)=USP、やりにくい日本語授業=学生の出発点異なる
■教科書 時代を映して変遷(20)=〝応急処置〟的な役割=デカセギ向けに会話ブック
■教科書 時代を映して変遷(21)=デカセギ向け講座開設=CIATE=必要に迫られ毎回満員
■教科書 時代を映して変遷(22)=帰国子女を受け入れ=イタマラチ学園=日本の国語教科書採用
■教科書 時代を映して変遷(23)=教材に童話『シンデレラ』=基金、教師養成を支援
■教科書 時代を映して変遷(24)=レベル異なるから複式で=日本語学校の“宿命”
■教科書 時代を映して変遷(25)=文協日語校が現地校に=インダイアトゥーバ=生徒増、地域貢献ねらう
image_print