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身近なアマゾン(17)――真の理解のために=近年気候変異激しく=東北地方、雨季の季節に誤差

2006年12月12日付け

 □ピラニアより獰猛なピランベーバ(1)□
〔東北地方〕という言葉に、何か辺境の地という響きがあるのは、日本だけでなくブラジルでもそのようだ。
 最近やかましくいわれている〔差別語〕になるのかもしれないが、岩手県が日本のチベットといわれていたのを思い出し、また〔みちのく〕という言葉がノスタルジックに聞こえることも、最果ての地というイメージでとらえてしまう筆者の偏見かもしれない。
 ブラジル東北地方を、ブラジル語(ポルトガル語)でノルデステ地方と呼ぶ。この地方は、ブラジルが一五〇〇年にアルバレス・カブラルによって発見されたと言われる地方で、ブラジル開拓ではもっとも早く開けた地方のようだ。
 にもかかわらず、この地方はその気候的特長である高温乾燥気候からくるイメージが強く、実際、雨が極度に少なくて乾燥高温であるため、海岸に面する地方を除いた内陸部の大半が砂漠か土漠で占められている。この地方のことは、ブラジル語で通称テハ・セッカ=乾燥地帯と呼ばれ、差別用語の趣がある。
 またこの地方出身者をノルデスチーノ(東北地方の人)と呼び、ブラジル人一般の通念として田舎者というイメージがあり、本来のノルデスチーノという単語の意味は〔粗野な人〕という代名詞に使われるのが通念になってしまっているようだ。
 この東北地方と呼ばれる地域には、北から南にむかって、マラニョン州、ピアウイ州、セアラー州、リオ・グランデ・ド・ノルテ州、パライーバ州、ペルナンブッコ州、アラゴアス州、セルジッペ州、バイーア州の九つの州が含まれる。河川系でいうと、一部の州を除き、大体サンフランシスコ河流域地方と考えてもらえばいい。本連載のさわりの部分で説明させてもらったクリスタル水の流れる川である。
 この辺りもアマゾン地方と同じように、十二月から四月くらいが雨季と思われるが、気候変異の激しい最近では、若干の誤差が出始めており、十月位から降り始めて二月までが雨季とあっている、それ以外の八カ月間は雨が極度に降らないようだ。
 今回この地方を訪れるにあたって、思い出したのだが、三十年前の学生時代にブラジルに一年間の農業実習に来た折、この荒地地方をバスで一カ月かけて旅をした。その当時の時季は、あいにく乾季の乾燥時期だったのだ。
 今回の旅は、三十年前に訪れた乾季ではなく、雨季の雨の最も多い時期に訪れた。上空から見るこの乾燥地域は、周囲一面緑で覆われており、これがここ四年ほど異常な干害で農産物の七割以上が減産という被害を被っている地域か、と思う程だ。空港の建物も他の地方都市と同じく町の郊外にあり、シンプルでけっこう綺麗に作られており、乾燥しているためか、とても清々しい感じがする。
 サンパウロの空港を午前五時という非常識な時間に離陸したため、機内で二回程スナックが出たが、到着した昼過ぎはとても空腹感を感じていた。
 到着してから、これから一週間の予定でこの近辺を案内してもらう大学時代の後輩紙屋君が出迎えに来てくれたので、空腹に耐えられず、すぐに近所のレストランに入った。
 三十年前の経験から、現在でもここのレストランには、例のファリーニャ(キャッサバの粉)とか痩せたニワトリの硬い油煮しかないのではないかという不安があった。つづく         (松栄孝)

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