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移民史料館=7階が1月に仮再オープン=皇室寄贈品、着物も展示へ=急ピッチで工事、協賛呼びかけ

まっさらな状態の7階(2018年12月11日撮影)

まっさらな状態の7階(2018年12月11日撮影)

 「2月には7階部分が新装オープンします。旧年7月に再開館した8階部分と合わせて、ぜひ見に来て」――ブラジル日本移民史料館の運営副委員長の岩山明郎(としろう)さんは、そう薦める。眞子さまご来伯に合わせて新装開館した8階部分は、従来の展示品に加えて、大型モニターが多数設置され、説明映像が増えて分かりやすくなっている。新年の展望を運営委員に聞いてみた。

 7階部分の改装工事は旧年10月4日に始まり、12月には写真にある通り、旧来の展示を全て取り外したまっさらな状態。これから電気系統、空調などの新調、展示設営まで工事を進めていく。新年1月25日のサンパウロ市誕生日に仮オープンし、2月19日には本格開館する。
 山下リジア副委員長は「ブラジル人の来場者から『日本文化を知りたい』という要望を良く聞くので、入口部分に、新しく日本文化紹介スペースを作ります。移民が持って来た着物や鎧兜、皇室から頂いた貴重な工芸品などを展示することを通して、『日本移民はこのような国から来た』という日本文化紹介をします」と説明する。
 旧年7月に8階部分の新装オープンをされるために御来館された眞子さまからは、「備前焼の犬の置物」の寄贈を受けていた。また、それ以前に来られた歴代の皇室関係者から頂いた寄贈品は、実はいままで展示されたことがなかった。これを機会に、7階部分の眼玉展示にしていくという。
 西尾ロベルト運営委員長も「史料館にとっては開館以来、40年ぶりの大改装。変革の時を迎えている」と現在を評した。1978年6月18日に天皇・皇后両陛下(当時は皇太子同妃両殿下)とガイゼル大統領を迎えて開館して以来、9階部分を付け足す工事はしたが、7、8階部分は基本的にそのままだった。

勝ち負け抗争に関する映像展示が充実した8階の様子

勝ち負け抗争に関する映像展示が充実した8階の様子

 現在観覧できるのは8、9階のみだが、「改装してから目に見えて入場者が増えた。日曜日などは200人も来場者が入る時があって内部が一杯になり、狭く感じる日すらあった」(山下副委員長)という。8階の勝ち負け抗争を説明する映像展示が充実し、特に関心を呼んでいるようだ。
 今は集まった予算額に応じて最低限の緊急計画(予算150万レアル)に沿って進めているが、本来なら基本計画(210万レ)、できれば理想計画(285万レ)、最終計画(325万レ)の形で進めたいところだ。
 8階部分はほぼ完成し、7階部分を現在進めている。将来的には9階部分の設備改修も視野に入れている。岩山副委員長は「まだまだ資金が足りない。最低限の改装で済ましているが、できればもっと費用をかけてより充実した展示にしたい。日系団体や企業からのさらなる協賛をお願いしたい」と呼びかけた。協賛企業名を金属プレートにして壁に設置し、タッチパネルでも紹介する取り組みをしている。

勝ち負け抗争の犠牲者の一人、脇山大佐の軍服も展示されている

勝ち負け抗争の犠牲者の一人、脇山大佐の軍服も展示されている


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 日本から地理的に最も遠いブラジルが、世界有数の親日国になっているのは、日本移民という身近な存在があるため。幼少時代から学校の同級生には必ず日系人がいて、ボルソナロ大統領をはじめ、多くの有名人・著名人が青年時代に日系人とナモーラした経験を持っている時代だ。そんな国は世界中探しても他にない。そんな日系人が自らのルーツ意識を忘れないようにするには、このような移民史料館の存在は欠かせない。一般ブラジル人にとっても、史料館を通して、日本という存在を身近に感じることが出来る。信頼できる国だからこそ、その国の企業の商品を躊躇なく買う行動にもつながったり、その国の宗教を信じたり、文化に興味を持ったりする。ブラジル社会への日本文化や歴史のショールームともいえそうな史料館だけに、その展示の充実はコロニアにとっては朗報と言えそうだ。

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