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花の歌謡祭=コロニア歌手が彩る豪華ステージ=令和祝い、昭和・平成の名曲次々に=北川さん、野口総領事も熱唱

豪華出演者ら

 コロニア歌手総出演の豪華なステージ――ブラジル日本アマチュア歌謡連盟(Instituto NAK do Brasil=INB、北川ジューリア好美会長)、藤瀬圭子プロダクションは共催で「花の歌謡祭」を4日、ブラジル日本文化福祉協会ビルの大講堂で開催した。厳しい寒さと雨を吹き飛ばすように約千人が来場し、令和最初の歌謡祭に観客は大喝采を響かせた。「ありがとう昭和・平成、今日は希望あふれる令和」と題し、藤瀬圭子さん、高畑正二さんによる名司会の下、コロニア歌手が豪華共演し、本紙読者によるリクエスト曲などを熱唱した。北川朗久INB名誉会長が5年ぶりにマイクを取り、野口泰在聖日本国総領事もバラードを歌い上げた。

 北川朗久さんが2日に82歳の誕生日を迎えたことを祝し、「北川朗久師82歳を祝う会」と題したプログラムも。同氏は得意のクラシックなど5曲を披露。聴衆は歌声に酔いしれ、会場は割れんばかりの拍手、大歓声、感動に包まれた。

藤瀬さんと野口総領事

 北川好美会長も朗久さんが作った楽曲を朗々と歌い、会場の熱気はさらに高まった。在聖日本国総領事館から野口総領事も登壇し、尾崎豊の名曲『I LOVE YOU』をしっとりと歌い上げた。
 本紙読者によるリクエスト曲のステージや、コロニア歌手のデュエットなどの新しい試みも。
 伏見エルザさん、加藤テレーザさんは姉妹で初共演。美空ひばり没後30年を迎えた特別プログラム「圭子がファンと選ぶひばりの歌」では、『雑草の歌』、『人生一路』の2曲を見事なハーモニーで聴かせた。

 

岡本さん、水谷さんが演じた『美女と野獣』

 水谷ペドロさんと岡本明美さんは映画『美女と野獣』の挿入歌『愛の扉』で登場。水谷さんは野獣のマスクをかぶり、岡本さんは華やかな黄色のドレスに身を包み、背後のスクリーンに映し出される映画のシーンに合わせ、約7分のラブストーリーを演じた。
 「平成のチャンピオンたち」と題したプログラムでは、昨年東京都にて開催された「第34回日本アマチュア歌謡祭グランプリ大会」にブラジル代表として出場し、グランプリを受章した中島幸夫さんや、パラナ州から葦原ジャーネさんが駆けつけ、卓越した歌唱でステージに花を添えた。
 藤間流日本舞踊学校からも、生徒が優美な舞いで会場を盛り上げた。平田ジョエさんも友情出演で駆けつけ、昨年の日本移民110周年の記念曲『ありがとうブラジル』で会場は大合唱の渦になった。
 現在日本で活躍中のコロニア出身ブラジル人男性演歌歌手・エドアルドも動画で北川朗久さんにメッセージと歌を贈った。
 事前に寄付を呼びかけ、来場者から集められた保存食、衛生用品はサンパウロ日伯援護協会へ届けられた。
 2015年にあった日伯外交樹立120周年を前祝いするために、第1回「花の歌謡祭」はその前年に開催された。「歌手の一人一人が花となって、それぞれの色でステージを彩って」という藤瀬さんの思いが込められている。

北川朗久、魂の絶唱歌に込めた熱い思い

祈るように「アヴェ・マリア」を歌う北川朗久さん

 82歳、北川朗久さんが全身全霊を込めて歌った――花の歌謡祭では、北川さん自らも5年ぶりにステージに立ち、『影を慕いて』、『宵待草』、『アヴェ・マリア』、『マンマ』、『オー・ソレ・ミオ』の5曲を歌いきった。
 本歌謡祭は「北川さんは最近体調をよく崩しているので、元気になってほしい」という藤瀬さんの思いもあった。同氏は数年前に肺気腫を患い、一時は寝たきりで酸素吸引も必要になっていたそう。「最後まで歌いきれないかもしれない」。同氏は直前までステージでそう漏らしながら、結局は5曲を全力で観客の心へ贈った。
 そんな北川さんゆえに『アヴェ・マリア』は「歌える喜びを神にささげる祈りの歌として選んだ」という。
 『マンマ(母)』は、自分と同じ82歳で亡くなった母に向け「僕はこれからも懸命に生きていくから、そばで見守っていてほしい」というメッセージに加え、「会場にいる母親の方々にも長生きしてほしい」という願いが込められているとのこと。
 体全体から声を出すように、力強い歌唱を聴かせた『オー・ソレ・ミオ(私の太陽)』。「昔はマイクなしでも会場全体に響かせるくらい歌えた。お客さんが輝く太陽のように元気にさせたくて、活気に満ち溢れたあの頃を思い出して歌った」と今日のステージを振り返った。
 ステージを終えたあと、北川さんは「今日はたくさんの仲間やファンが来てくれて、ステージの弟子、孫弟子も大きな拍手をいただいた。一生の思い出になるくらい嬉しい」と穏やかな笑顔を浮かべ、「母が亡くなった82歳に私もなった。これからは一周りして1歳に戻ったつもりで、コロニアのために歌い続けたい」。北川さんは決意を新たにしていた。


本紙読者リクエスト曲=思い出の刻まれた名曲たち

リクエスト曲応募当選者ら

 花の歌謡祭では、本紙の呼びかけで楽曲のリクエストを募集し、応募のあった中から約10曲をコロニア歌手が本人の目の前で歌った。応募者から当選者11人も発表され、来場者にはステージで記念品を授与。また選曲の理由も発表し、目の前で繰り広げられるリクエスト曲の豪華歌唱に聞き入った。
 藤瀬圭子プロダクションと本紙合わせて300件以上の手紙、電話、メールのリクエストがあった。
 佐々木寛一さんは『荒城の月』をリクエスト。「ソロカバに両親と6人の兄弟で移住し、日系コーヒー農園で働いた。亡き母が満月の夜に月を見上げ、よく『荒城の月』を口ずさんでいた。この歌を聞くと、幼少期に見たその光景を今でも思い出す」とのこと。目の前でしっとりと歌う高畑正二さんに合わせて、口ずさんでいた。
 馬場亮二さんは4枚の便箋に選曲の思いをつづったそう。「中国、日本それぞれで12年暮らし、ブラジルに移って62年になる。今では3人の娘、6人の孫もおり、彼女らが未来に夢を持ってブラジル社会に貢献することを信じている」と紹介。
 秋吉寿子さんは『水色のワルツ』について「青春の思い出が詰まった曲。13歳の時に発表され、高校生になってから曲に共感するようになった」という。
 当選者とリクエスト曲は次の通り(敬称略、五十音順)。
 赤木政敏『湯の町エレジー』、秋吉寿子『水色のワルツ』、石橋包次『名月赤城山』、小池康夫『影を慕いて』、佐々木寛一『荒城の月』、寺田幸恵『人恋酒場』、豊田久子『黒い花びら』、西尾すみ『川の流れのように』、馬場亮二『丘を越えて』、比嘉光子『この世の花』、前田文子『柔』

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