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【2020年新年号】新年特集号=ボードゲームが密かなブーム?=今見直されるアナログな魅力=戦争、不動産売買、鬼ごっこも=ブラジル人考案のゲームも

色とりどりの駒、美しくデザインされたボードで楽しむ愛好家たち

 羽子板、凧揚げ、駒回し、福笑いに双六。日本にはお正月ならではの伝統的な遊びがある。家族が集まりトランプやかるた取り、花札に興じた思い出を持つ人も。はたまた、子供のころから麻雀が得意。お年玉を何倍にも増やしていたという〃豪傑〃もいるかも。TVゲームが人気の現代。手の中に収まるスマートフォンで、子供たちに限らず若者が「なにやら訳の分からないことをやっている」と嘆く人々に、ブラジルで流行の兆しが出ているアナログな「ボードゲーム」の世界を紹介する。

得点ボードやサイコロ、カードなど、見ているだけで楽しいゲームの小道具

 ポルトガル語で「ジョーゴ・デ・タブレイロ」と総称されるボードゲーム。
 双六もその一種だが、現代のボードゲームは趣が全く違う。世界中で数えきれないほどのボードゲームが存在するが、唯一の共通点は「ゲーム盤があること」それだけだ。
 多くの場合、サイコロが使われる。それに様々な役割を果たす駒やカードもしばしば使われる。
 サンパウロ市では4年半前から毎月1回、愛好家たちのイベント「ボードゲーム・サンパウロ」が開催されている。昨年末でその回数は55回を数えた。主催のフェルナンド・セルソ氏(40)は「今のボードゲームはただサイコロを振って、出た数だけマス目を進んで…というだけのものではない」と言う。

既に50回以上開催されているボードゲーム・サンパウロを主催しているフェルナンド・セルソさん

 ゲームの目的(勝利条件)も様々で、戦争を模したゲームで相手を打ち負かしたり領土を侵略するといったものから、不動産売買がテーマで相手より多くの資産を築くことが目的だったり、推理物で一人だけ犯人、動機、凶器を知っていて、他の参加者が共同でそれを当てるもの。盤の中で鬼ごっこが行われ、時間内に逃げきれば(捕まえれば)勝ちというものまで、さまざまだ。
 また参加者同士で競うのではなく、参加者が協力してある条件を達成することが目的と言うものもある。
 ほとんどの場合、サイコロ運だけで勝負は決まらない。戦略や駆け引きが重要で、他の参加者と会話、交渉をしながら進めるゲームもある。

愛好者のたまり場はここ

 「ボードゲーム・サンパウロ」の会場は、サンパウロ市南部のメトロのプラサ・ダ・アルボレ駅近くにあるボードゲーム販売店「Game Vault」(Rua das Azaleas Nº138)だ。毎月最終土曜日に開かれ、100人を優に超すボードゲームの愛好家が集まる。
 このイベントにスタッフとして参加し、特定のテーブルを担当してルールを説明したり、巧みな会話術で見知らぬ人々を一つのテーブルに集め楽しい時間を演出していたアブラアン・レンシオーニさん(30)。
 「盤や駒やカード、サイコロも丁寧に作られていて、見ているだけで楽しめる。ブラジルで『映画でも観に行こうよ』という感覚で、ボードゲームの本場ドイツでは、『ボードゲームでもしようよ』と気軽に仲間で遊ぶ文化がある。僕たちはそんな文化をブラジルでも広めたい」と語った。
 アブラアンさんは、RonHolidayと言うゲーム販売会社を経営。「外国で人気のボードゲームの販売権を買い、ゲームのルールを翻訳して販売」という一般的な輸入ビジネスだけではなく、「ブラジル人のゲームデザイナー(ゲームのルール、仕組みを考案する人)をもっと知ってもらいたい」との思いから、ブラジル人考案のゲームを積極的に販売している。

ボードゲーム振興のためにボランティアでゲームのルールを説明するユリキ・ウエダさん

 ボードゲームが好きで「もっとボードゲームが盛んになってもらいたい」「ボードゲーム好きの仲間を増やしたい」との思いから、ボードゲーム・サンパウロにボランティアとして参加し、初めての人にルールの説明を行っていたユリキ・ウエダさん(25・3世)。
 彼は「ボードゲームは直接人と顔をつき合わせて遊べるところが最大の魅力。ゲーム好きにはいろんなタイプがいるけど、僕は何が何でも勝利を目指すタイプじゃない。結局のところ、みんなで楽しむことが最大の目的だから、わざと負けてあげることもある」と言う。

「一緒にいても心は別」のスマホとは別世界

 ボードゲームを「ただの遊び」と考えるのも誤りだ。ボードゲームには教育的効果もある。ゲームの状況、対戦相手の考えていることを先読みして、どうやったら有利に進められるか作戦を考える。
 また目的を達成するため、他の参加者から協力を得るにはどうやって振舞ったらよいかを考える。TVゲームやネットゲームでの無機質な文字だけのチャットでは育めない能力だ。
 多くの愛好者がいるような人気ボードゲームになると、大の大人が真剣になって競い合う、公式大会も開催されている。
 世界規模の人気で、世界大会に出場するブラジル代表選手を決めるといったものもあり、そこまでくると、到底「子供の遊び」とはいえない。
 ボードゲーム・サンパウロの主催者、フェルナンド・セルソさん(40)は、「スマートフォンが普及した昨今、家族や友達が同じソファーに座っているのに、会話もしないでスマートフォンをいじっている光景をよく見るけど、ボードゲームで一緒に遊ぶことで、こうした現状を、より人間らしいふれあいに変えることが出来る。直接会話して、共に笑って楽しくすごすためにうってつけのツール」と語る。
 アブラアンさん、ウエダさん、セルソさんらに共通していたのは、「ボードゲームは、まだまだマイナージャンル。なんとかこの魅力を広めて行きたい」という想いだ。
 「我々はまだニッチ産業。どんどんボードゲームの魅力を広めていきたい」と語るセルソさんは、「このイベントにはいわゆるオタク(趣味に凝り、お金をつぎ込む成年以上の男性)だけでなく、子供も若い女性もたくさん来ている。自分自身ボードゲームを広める活動をしていく中で、多くの友人を得た。ぜひみなさんもボードゲームにはまって、ボードゲームの輪を広めましょう」と語っていた。
 クリスマスや新年など家族・友人が集まる機会も多くなるこの時期、ボードゲームで親睦を深め、身近な人の意外な一面を発見してみるのも良いかも。

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