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≪サンパウロ市≫コロナ禍でバール半分閉店=手が届かない企業向け融資=本格的な企業倒産これからか

客席の間隔をあけて営業するレストラン(Foto: Luciano Lanes / PMPA)

 パンデミックの直撃を受けた分野の一つは、文句なしに飲食業界だ。ブラジル・バール・レストラン協会(Abrasel)によると、新型コロナウイルスの影響でサンパウロ市にある2万3千軒のバール(軽食店)やレストランのうち、半分以上の1万2千軒が閉店した。ブラジル地理統計院(IBGE)によると、5月末までにブラジルで780万人の雇用が喪失している。18日付エルパイス・ブラジルが報じた。
 南米最大の都市サンパウロでは、パンデミックの間に半分のバールやレストランが、ひっそりとシャッターを下ろして、そのままに閉店した。外出自粛措置によって経済麻痺した結果、「aluga-se 」(貸します)の看板がかけられた店がどんどん増え、普通の光景と化した。というのも、連邦政府の中小企業向け特別融資にありつけたのはわずか12・7%だったからだ。
 たとえば、2006年からサンパウロ市中心部で営業していたレストラン『ラ・フロンテラ』の店主アナ・マソッチさんは、新型コロナウイルス感染拡大により4月に閉店し、22人の従業員を解雇した。現在は40年間続く別のアルゼンチン料理店に2人だけ従業員を移して何とか店を維持している。「最初は配送サービスだけで対応し、現在は段階的緩和措置により40%の収容人数で再開しているが、経費の半分も賄えていない」と嘆く。
 マソッチさんは政府の零細・中小企業支援国家プログラム(Pronampe)から融資を受けようと何カ月も試みてきた。しかし「私たちは店を閉めないために、政府融資を引き出そうとしているのに、銀行では申請条件を満たさないと拒まれる。申請できなければもっと解雇するしかない」と申請の難しさを説明する。
 融資の難しさを痛感する事業主は多い。ブラジル零細・中小企業支援サービス(Sebrae)では、感染拡大の数カ月間に中小企業からの相談件数が3倍に急増した。相談時の要望には「政府はすごい大金を融資すると発表したのに、どうやってそれを受けられるかが説明されないのはなぜか」という疑問が一番多い。同サービスのサンパウロ責任者は「我々は人々が諦めないためのお手伝いをしているが、多忙を極めている。複雑な要望に応じることはできない。政府自らが彼らを助けるための対応策を練らなければならない」と語る。

 Pronampeはわずか1カ月足らずで、当初予定していた159億レアル全額を融資した。経済省のデータでは約21万8千社への融資を可能にしたが、パンデミックを乗り切るために融資を必要とする中小企業ははるかに多かった。
 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、感染拡大が始まって以来70万社以上の企業が閉鎖しており、うち99・8%が小規模企業だった。「Pulso Empresa」による「新型コロナウイルスの企業への影響」調査では、給与支払いのための政府緊急融資を利用できる企業は12・7%にとどまっていることも明らかになっている。
 Pronampeは、年商36万レアルまでの零細企業や480万レアルまでの小規模企業を対象にしており、その資金は社員への給料の支払いや他の運営費に充てられる。期間は36カ月で、猶予期間は8カ月。経済基本金利(Selic)と同等の利息に年1・25%を加算している。
 融資を希望する企業が増える中、議会は7月30日に別の120億レアルの融資プログラムを発表。17日から銀行で利用できるようになるが、経済省のアントニア・タラリダ零細・中小企業開発局長によると、その融資は再び「非常に早い時期に終了する」と話している。
 第1回目の融資は10金融機関がPronampeを運営し、大手銀行の中では連邦貯蓄銀行、ブラジル銀行、イタウ銀行が参加した。第2回目はブラデスコ銀行とサンタンデール銀行も参加する必要があるという。
 ジェツリオ・バルガス財団(FGV)は、Pronampeや他融資プログラムなどの需要を満たすために政府が必要とする金額は2020億レアルと推定する。それでもまだ不足すると見られている。
 同財団の小規模金融研究センターのコーディネーターであり、同研究の著者の一人であるラウロ・ゴンザレス氏は「Pronampeの金額は必要額の20%にも達しておらず、政府からの保証がなければ、民間銀行は融資を増やせないどころか、ブレーキをかけてしまう。中小企業への融資を維持するためには、政府が行動を起こす以外に方法はない」と話している。
 同氏によると、中小企業よりも、零細企業への融資申請の方が手続きが困難で、感染拡大中に倒産するリスクが高い。いつまで感染拡大期間が続くかが不確定であることを考慮すると、今年の後半にさらに多くの企業が倒産する可能性があると推測する。
 「コロナ危機に立ち向かうためには、企業向け融資と個人向け緊急援助金の2つの手段がある。これら成否が今後の経済を左右する。融資が不足したら、数カ月後には企業倒産が増える。緊急援助金が終了した時は、消費が減退する」と付け加えた。

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