ホーム | コラム | 特別寄稿 | 特別寄稿=どうなるコロナ禍の新年=発展の基礎を決める年=サンパウロ市在住  駒形秀雄

特別寄稿=どうなるコロナ禍の新年=発展の基礎を決める年=サンパウロ市在住  駒形秀雄

雲間から光が差し込む様子(参考写真)

 薄曇りの空から時折太陽ものぞく穏やかな空気の中で 新しい年が始まりました。
 正月は真夏だというのに気温は快適、日本のような大雪もないし地震も無い、恵まれた土地なんだなと思わされます。
 さて、年が改まるとなると 「今年はどうなるのだろうか」「これを機会に気持ちを入れ替え、あれもやりたい」「これもこうすれば」と種々思いを巡らすことになります。
 しかし、現実に返ってこの世の中を眺めてみると、TVも新聞もコロナウイルスに不景気の言葉があふれ、街を歩く人々の顔までが何か冴えなく見えます。
 「こりゃいかん。我々は正直に一生懸命働いて来たのに、老境を楽しもうという今になって、また苦しい時代を過ごさねばならないのか。サント(神様)、何とかよい解決法を授けて下さい」と、苦しい時の神頼み、こう祈りたくもなります。
 では一体、今年はどんな年になるのか? いや「この苦境を抜け出すために我々はどういうことをしたら良いのか?」。皆様と一緒に考えてみましょう。

明かりの見える経済

 昨2020年は思いもしなかったコロナ禍を受けて、それまでもパットしなかった経済は更に落ち込みました。経済成長率で言うと 4・5%マイナスとなっております。
 では今年はどうかと言うと種々の研究所の数字がありますが、経済省の発表では3・2%程度のプラスとなっております。
 この成長率は低いが、この数年来マイナス(縮小)が続いて来た経済には、これから上昇に転ずるという転換点で、希望を与えてくれる数字です。
 ブラジル以外の国の経済指標は何れも「プラス」を示しており、これは世界経済全体が発展に向かうということで、我がブラジルにとっても明るい材料となります。(表1、表3)

 昨年度はコモディティー農産物の国際相場も上向き、大豆38%、オレンジジュース25%、トウモロコシ19%などの値上がりが見られ、ブラジルの貿易収支530億ドルの黒字につながりました。今年もこの傾向は続くと見られています。
 さて、今年の冴えない経済面もチェックしてみましょう。国民的行事のカーニバル開催は、年初から7月に延期となりました。6月末にはフェスタジュニーナもあるのに、本当に実行出来るのか、と疑問は残ります。7月には日本でオリンピックが開催されるので、ブラジル選手の活躍も見たいところですが、その頃にパンデミックはどのようになっているのでしょうか?
 日系社会の「県連日本祭り」、参加者が多い「カラオケ大会」なども、少なくとも今年は大人数を集められない可能性あります。
 ですから、一般庶民の息抜きというか楽しみの場が大分減ることになりそうです。観光、旅行業界、外食産業などの苦境は皆さまご存じ、コロナの収束次第というところでしょう。

コロナは抑え込めるか

 この様にコロナウイルスの3蜜回避策は、市民生活、経済活動に大きな(マイナスの)影響を与えてますが、今年は明るいニュースが入って来ました。「コロナに罹らないワクチン」実用化のニュースです。
 イギリスやアメリカ、ドイツなど先進国では既に年末からこの「予防接種」が始まっています。ブラジルでも欧・米の一流会社からこのワクチンの入手を図っており、1月―2月には接種(注射)開始と喧伝されております。(表2)
 これらの策がキチンとした計画の下に整然と実行されれば、コロナ第2波、3波の被害が相当抑え込まれると思われます。ですが、どうもお偉方の宣言通りには行かない雲行きです。
 曰く、
★保健省の幹部が天下りの軍人で占められ現実に即した対策が取られて居ない。
★スケジュールがずさんでそれに必要な準備がされていない。人、注射器、注射針などの手配が本当に間に合っているのか。
★連邦政府とサンパウロ州政府の間で対抗意識があり、無駄な手間暇をかけている。民間と役所がバラバラで動いている。
 などなどです。
 こういう事なので、政府が言うように「今年7月頃までにワクチン接種が済んで、以前のような普通の生活に戻れる」というのは「絵にかいた餅」だ。
 コロナウイルスは他の伝染病(インフルエンザ、結核)の様に、「感染数は少なくなっても結局、一般の市民生活と共存しながら、生き残っていくのでないか?」と言われております。

どんな経済発展策が

昨年12月11日、ペルーでも始まったワクチン接種の様子(LEGADO Lima 2019)

 経済の発展を目指す政府当局も手を拱いてこれらの「不景気」を見逃して居るわけではありません。自由主義市場経済信奉者のパウロ・ゲデス経済相を中心に、経済振興、構造改革の具体案を作成し、既にその内の相当部分を議会などに提出しております。議会ではこれを専門部会に掛け審議し、議会本会議で承認されれば、これが法律として実施されることになります。
 提出されてる法案の内容は広範に亘り、且つ量も多いので関係ありそうな基本策の一部を紹介致しましょう。
(1)【公共財務の健全化】2019年当国の負債額は国内総生産額の76%でした。これが2020年にはコロナ禍が発生し、この解決のためには『要る金は借金してでも使う』と支出の天井枠を外したため、借金額は100%近くに上昇しました。
 一般の家庭で言えば、支出が収入を超えてはならないのに、借金の額が収入の1年分くらいになったという状況です。これは大変、至急に改善が必要です。
(2)【税制改革】ブラジルの税制度は複雑で時代遅れと言われております。例えばある物を輸入するとこれには―輸入税、工業製品税、取引税がかかり、更に、運賃に掛かる税金、金融に掛かる税金、社会福祉に掛かる負担金などがあります。
 これを例えば連邦に属する税金だけでも一本化して合理化しようという主旨なのですが、利害錯綜する業界の意向などもあり、未だ審議もされていません。
 また、所得の多い人に、より多くの税負担をしてもらい、他方、貧乏の人の税負担を減らそうという案もあるのですが、これも成立の成否不明です。
(3)【行政改革】何だかやたらに多いお役所の数を整理しよう。何をしているか分からない様な公務員の数(定数)を減らそうという案ですが、これも審議未了です。
(4)【公社民営化】他に電力公社や郵便業務を民間に移し、業務の効率化、迅速化を計ろうという法案もあります。公社の経営権を民間に売却すればその代金は政府の収入となる訳で、この面でも政府にメリットが出てきますね。また、公社経営などには不当な政治介入も起こり得、これが汚職の源になると言う人もいます。 
 ペトロブラスが汚職の巣窟になったことは国民の記憶に新しいですね。
 以上、主な案件だけをざっと挙げたのですが、これらの幾つかでも実行出来れば、ブラジルもずっと良い国になります。

アストラゼニカ社のワクチンに見入るボリス・ジョンソン英首相(Andrew Parsons / nº 10 Downing Street )

 ブラジルと他の国を比較してみると、中規模の企業の例で、その国の税金を払うのに何時間の作業が必要かを比較した国際機関の研究例があります。
(A)ブラジル=1500時間
(B)南米諸国=317時間
(C)EU先進国=159時間です。
 「ブラジルは広大な国土に億を数える人口を持つ大国だ」などとオットリ構えてはいられません。同じような〈あるいはもっと苦しい条件を持つ〉中国やインドは年間8%台の成長発展です。しかもこの2国は、コロナワクチンでも先進国に伍して「ワクチンの供給国」なのです。どうしてこのような差があるのか? 考えてみて下さい。今まで自分で汗を流してこのブラジルを良くしてきた皆様のご意見を伺いたいものですね。(表1)

どうする解決策

 「多くの難問を抱えている現状は分かった。ではそれを解決するにはどうしたら良いのか?」
 「闇の明けない夜はない」――解決策はあります。
 まず、パンデミックは専門家のいう事をよく聞き、その指示通りに対策を講ずるのです。関係責任者が「プライア(海岸)には行かないで、マスクをして」と指示しているのに、それを破るようにパンツ一つで海に飛び込んで意気を見せても、「悪いお手本を見せる大統領だ」と悪評を買うだけで解決になりません。物事は理屈通りに動くのですから。
 次に経済景気については、前に述べた経済相の政策案を実行に移すのです。コロナ対策も経済活性化も何れも難しい課題ですが、この二つを並行して解決する努力をするのです。

PFIZERとBIONTECHのワクチン(DoD photo by Lisa Ferdinando)

 今までもこの社会改革の必要性は認識されながら、いつも選挙の年と重なり、選挙民に不人気な政策は推進出来ませんでした。幸い今年は煩い選挙がありません。「苦い薬をのみ、長年の持病を治す」絶好のチャンスです。
 ここで戦後この地に移り裸一貫から自分の才覚と努力で、今はそれなりの団体の長をしている古山さんの意見を聞いて見ましょう。
 「コロナ苦境と闘いながら、経済改革も実行とは並大抵の作業ではない。多くの困難もある。しかしそういう障害を克服排除して、多数の国民の幸福のために努力するのが我々の務めであり、かつ、やりがいというものではないか。自分の信ずるところに従って勇猛果敢に進むんだ。すれば道は開ける」と強い口調で言いきりました。
 年齢とともに薄れて居た若いころの開拓精神を思い出させてくれる言葉でした。
 ところで、ある権威ある国際機関の研究によると、2050年の世界主要国の国力(GDP)ランキングは、今と大きく変わってるのだそうです。
 即ち、1位は中国、2位が米国、3位はインドで、4位にはなんと我がブラジルが入っています。凄い! 国力オリンピック入賞ですよ。自分の現状と比べてあまり差があるようで、何処まで信じたら良いものか戸惑います。でも話半分で聞いても嬉しい話ではありませんか?
 VAMOS! 元気をだして今年も頑張りましょう。 (この文についてのコメントはこちらへどうぞ=hhkomagata@gmail.com

image_print

こちらの記事もどうぞ