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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(170)

 そのひとつが獄中仲間と歌った「愛国行進曲」だった。年上の子どもたちは歌詞を暗記していて、大声でいっしょに歌った。  彼が確信していた日本勝利のニュースは、再び日本への帰国の夢をよみがえらせた。だが、今回は沖縄の家族のためではなく、日本が勝ったのだから、新しい国造りに貢献したいためだった。帰国は可能だと考えただけではない。それを ...

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月刊ピンドラーマ=11月号配布中

 コジロー出版のブラジル情報誌『月刊ピンドラーマ』の11月号が出版された。  おおうらともこ氏の「サンパウロ不思議ショッピング」では、商店のレジカウンター付近や道端の新聞販売店でよく見かける菓子を紹介。  同出版による、日本人のブラジル生活必携の書『楽々サンパウロ』最新刊も、先月から好評販売中だ。その他、イベント、飲食店、求人情 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(169)

 あるいは、もっとよりよい生活ができたかもしれない。ここにやってきた日本人家族のほとんどは、貧乏生活に耐えてきた。現在は、どうにか食べていけ、仕事があるといっても、渡伯時の夢、母国に錦を飾るというにはほど遠い状況である。正輝は自分が家族が生きているだけの最小の金しか得られず、金儲けする能のない人間だということをよく知っていた。 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(168)

 9月9日、コレイオ・パウリスターノ新聞が「臣道聯盟の8人の指導者が『連合軍により座をおわれた』という情報をサンパウロの日本人に流した」という記事を報道した。それは日本の敗戦を全てのブラジル人が知っていることを臣道聯盟の指導者が認めたということだ。もし、本当のことを伝えた記事だったら、いままで臣道聯盟が行ってきたことを認めたこと ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(167)

 投獄や情報機関、社会、政治家たちの臣道聯盟に対する激しい追及にもかかわらず、まるで何事も起らなかったかのように、何人かの聯盟のメンバーは日本の勝利をかたくなに信じ、犯罪により組織の活動を続けようとした。終戦後1年経ったころ、警察は日本大使館宛の書類を手にした。内容は次のようなものだった。  「我々は終戦1年を迎え、母国から遠く ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(166)

 この法令が可決されたことで、コウト・フィーリョはこう思ったに違いない。  「なんとか〝丸〟とかいう移民船に乗った何万人もの黄色いヤツらがやってきて、戦場地のような植民地にばら撒かれた。侵略手段として、黄色い危険者たちはその地に根を下ろしていった。ところが、抜け目のない日本政府は執拗に迫り、法を破って、日本人を際限なく送り込んだ ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(165)

 結局、その間、23人の死人、86人の負傷者、合計109人だが、その内訳は66人が認識組、43人が勝ち組となる。43人の勝ち組のうち、40人が6月末のオズワルド・クルスの事件のときに殺害されている。殺害、あるいは殺害未遂の加害者リストには45人の名が挙げられた。中館ジョージ調査員の意見でこれら45名はテロリストだと指摘されている ...

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『西風』節目の第10号=田中慎二追悼特集など多数収録

 西風会(せいふうかい)は10月に『西風』第10号を刊行した。節目を記念した特別号。  巻頭では、昨年9月に死去した田中慎二さんの一周忌をしのび、同氏の画文集『アンデスの風』から絵画とエッセイの一部を掲載。『西風』の装丁自体も田中氏が手掛けたもの。  現在、サンパウロ市のブラジル日本文化福祉協会ビル内ブラジル日本移民史料館(R. ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(164)

 「エリーゼオス宮殿での会合は完璧な成果を治めた」と6月29日の新聞で発表した。「次のことでそれが証明できる」と得意になり「会議招集の前には州内で日本人テロリストにより87人が暗殺された。殺害された者の数は9日から17日の間に10人にのぼった。会合から12日目を迎え、今、サンパウロに平和がおとずれた。日系社会は落ち着きを取り戻し ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(163)

 通訳として、スイス領事館の森田よしかずと、ジョゼ・サンターナ・デ・カルモが招集され、二人は臣道聯盟の調査のさい、カルドーゾ所長により働きを認められての招集だった。当日は500人から600人ほどの日本人社会の代表者が州知事官邸の赤い広間を埋め尽くした。  はじめに、スイス全権公使はすでに日本人たちに配布されていた書類を読み上げた ...

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