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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(112)

 外交面で、日本は国際連盟を脱退して以来、孤立状態にあり、同盟国を必要としていた。共産主義に異議をとなえるヒットラーの国ドイツとロシアの地に侵入したい日本が接近した。そして、1938年その交渉が始まった。ドイツのヨーロッパ大陸の進展が日本を勇気づけた。フランス、英国、オランダの強国がドイツに負けそうになり、アジアの植民地が維持で ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(111)

 1938年4月18日発令の第383令により、外国から資金を受けず、法務省と内務省に合法的に登録された文化、民間、慈善の協会だけが認められることになった。  この間、新国家体制は外国人の活動を押さえつける令を盛んに発布した。  1938年4月27日発布の第293令は保安と国家制度を揺るがす犯罪者の国外追放に関してで、対象者はサボ ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(110)

 その卑しい生き方がわが国の労働者と摩擦を引き起こしている。利己主義、不誠実、不従順な生活がブラジルの最も肥沃な地域に民族的、経済的、文化的な異分子集団を形成している。同化させる手段など皆無といえる。日本人の肌の色、特性、生活概念、実利主義を変えることのできるものはいないだろう」  歴史家アルシール・レニャーロは 「ここに記され ...

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二宮夫妻=『絆 皇室とブラジル』刊行=サンタクルス病院で無料配布

サンタクルス病院80周年に合わせて刊行『絆 皇室とブラジル』

 サンタクルス病院(石川レナト理事長)は1日、サンパウロ市内ホテルで行われた開院80周年式典の中で『絆 皇室とブラジル』(二宮正人/二宮ソニア共著)を刊行した。全191頁、日ポ両語。  昨年は開院79周年と日本移民110周年を記念し、皇族が詠まれた短歌130首を収録した詩集を刊行した。  今回は、1934年に昭和天皇から御下賜金 ...

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ピンドラーマ6月号配布中

 コジロー出版のブラジル情報誌『月刊ピンドラーマ』6月号が出版された。  美代賢志氏による「ブラジル社会レポート」では、大学予算の削減に関して、教育と家庭内の財政について解説。おおうらともこ氏の「サンパウロ不思議ショッピング」では一風変わった石鹸や帽子などを購入できる店を紹介。その他「クラッキ列伝」、経済コラム、グルメ、イベント ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(109)

 その当時、同意見の者がほかにもいたが、ミゲル・デ・コートやフェリックス・ペシャコに扇動され、すでに排日運動が始まっていた。1926年、コートは全国に警告を発した。 「わが祖国は無防衛のまま、アジア人の手にかかろうとしている。神のお助けがないかぎり、闇夜がくるだろう」また、オリヴェイラ・ヴィアナは、何度も「日本人は硫黄と同じだ。 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(108)

 そして、ブラジル人やヨーロッパ系移民はこのような発音を嘲笑して、日本人を「ジャポン」と呼んだ。こうした呼び方が広まるうちに、皮肉をまじえて、なかには横柄に、命令的な話し方をするものもあった。 「ジャポン、こっちにこい!」 と横柄な口をきいた。  正輝はこうした口調に、何度も邪険に答えなかった。口げんかを避けようと自重したのだ。 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(107)

第7章 戦争と迫害  母国から遠くはなれて住む者の生活の変還、成功や物質的向上の確かな前途の見通のなさ、また、ヨーロッパ民族、ブラジル人、その他の人たちと意思を通じることの難しさが重なり、日本人移民は社会から孤立状態にとなった。  とりわけ沖縄人は多くの場所で、他の日本人からさえも時代おくれの人間とみなされたりしていた。そこで、 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(106)

 しかし、考えを述べるまでには達しなかった。その必要もなかった。樽は正輝が短期間につぎつぎ起きた事件に打ちのめされていることが、その顔つきから判断できた。つねに自分の主張を論理的に述べ、相手を同意させるあのいきいきした俊敏な目つきが、今は放心状態で、遠くをむなしく見つめている。目が曇っている。話し方も以前の確信的で迫力があったも ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(105)

 そんなある日、何年も会っていなかった叔父の樽がアララクァーラを訪れた。それほど頻繁ではなかったが、二人はそれぞれの消息を伝えるために手紙のやりとりはしていたから、あまり詳しくはないが相手の生活について知っていた。ウサグァーが殺されたときそれはセイコウ(彼は沖縄時代から甥の正輝をこう呼んでいた)の問題で、本人が何とか解決するだろ ...

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