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日本の水が飲みたい=広橋勝造

連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(103)

ニッケイ新聞 2014年2月21日 「それにしても小さな町ですね・・・」 「松原氏自身も住むには不便だと云う事で、次のバンデイランテと云う町に住んでいましたが・・・、今は・・・」 「正にあの町は選手収容所ですね」話しているうちに町から遠く離れていた。 松原氏が住んでいるバンデイランテの町をかすめて、距離をのばした。 一時間後、遠 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(102)

ニッケイ新聞 2014年2月20日 「インディオの言葉で『魚がいない河』です。ですが、他の河に比べて少し少ないだけです。この河はパラナ大河に合流し、パラグアイ国境を流れ、アルゼンチンに入り、それからアルゼンチンとウルグアイの国境を流れ、ラプラタ河に合流し、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスをかすめて大西洋に出ます。蛇行して全長六 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(101)

ニッケイ新聞 2014年2月19日 「京都を北都と呼ぶのに対し、奈良を南都と称した奈良時代ですね」 「古川記者は歴史をよくご存じですね」 「理工系の学課が嫌いで、その時間を読書に充てていました。だから、理工系以外の社会、歴史、法律、と分野を問わず本を読みまくりました。それで、自然と記者になってしまい・・・」 「記者は文殊の知恵の ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(100)

ニッケイ新聞 2014年2月18日 車はサンパウロから三百キロ地点で、別の街道に入った。地平線まで真っすぐに伸びたハイウェーは、二、三キロメートルくらいの間隔で上下にうねり、景色は牧場と、バイオ燃料のエタノールの原料として注目されているサトウキビ畑が地平線まで単調に続いた。 「見渡す限りサトウキビですね」 「サトウキビは、穀物と ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(99)

ニッケイ新聞 2014年2月15日 「はい、古川さんが『ボーズの件、どうなった?』と聞かれましたね。それを『因』つまり原因としましょう。あれをきっかけに喧嘩にまでなりました。あれは『あいつはボーズの件を取材したくてたまらないのだ』とジョージさんが勝手に決めた『縁』で喧嘩に発展しました。もし、ジョージさんが『ボーズの件、心配してい ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(97)

ニッケイ新聞 2014年2月13日 「しかし、酷い鬼婆だ」 「ところがです。このお婆ちゃんが、一ヶ月して、バスで、二日がかりで彼の所にお供え物を持って来たのです。それも、十キロのお米、その頃珍しかった自分で作った味噌、大根やキュウリの漬物やらで二十キロ近くもある荷物をかかえてです」 「へー! それで彼は?」 「その日、善一和尚は ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(96)

ニッケイ新聞 2014年2月12日 【??『般若心経』?】 「で、フルカワどうする?」 もったいぶった口調で、 【考えてやってもいいが、それから、車は?】 「中嶋和尚の安全の為に大型車を用意する」 【よし、承知した】 「それから、罰金は自分で払うんだぞ!」 【そのくらい常識だ! それで、他の費用は?】 「正当な領収書があれば、費 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(95)

ニッケイ新聞 2014年2月11日 「そうです。それで、修行僧達が集まり、その教えを文字にまとめ経典が生れました。その後も三回、同じ事が行われ、経典の数も増え、教えの解釈にも差が出て宗派が生まれ、沢山の御経が出来たわけです」 「その中の一つが『ハンニャ』なんですね。仏教の話を聞いているうちに、古川との喧嘩がアホらしくなりました」 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(94)

ニッケイ新聞 2014年2月8日 「素晴らしい記者なんて、あいつに関してそんな事ありませんよ」 「そう言っている私もまだ『悟』りの『さ』の字も分かりませんが、今、客観的にジョージさんとあの新聞記者とのやり取りを見ていますと、『般若心経』でうたっている、みんな『空なのだ、だから、気にしなくてもいいじゃないか』と、少し分かったような ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(93)

ニッケイ新聞 2014年2月7日 「(紹介しろ)」 「(中嶋さんだ)」 「(やっぱり、想像した通り例のボーズだな、どこに住んでいる?」 「どうでもいいじゃないか。取材は止めてくれ! それに、フルカワには関係ないと言っただろう」 「なんで? ジョージの知合いは俺の知合いだろうが。それで?」 「・・・。俺達、ゆっくり酒を飲みにきたん ...

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