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日本文化を踊ろう!=―ブラジルに生きる郷土芸能―=第9回・最終回=レプレーザ文協=子供に人気の阿波踊り=危機超えヨサコイに挑戦

8月27日(水)

 「踊る阿呆に 見る阿呆 同じ阿呆なら 踊らにゃそんそん」――。徳島名物「阿波踊り」といえば、毎度お馴染みのこの名文句。ソコーロ区エウクリデス・ダ・クーニャ街のレプレーザ文化体育協会では毎週金曜日午後九時ごろから、コローニア会館の子どもたちも交え約五十人が阿波踊りに取り組んでいる。威勢のいい掛け声が飛び交う練習風景は見もの。芸能郷土シリーズ最終回は、阿波踊りで締めくくった。

 レプレーザ連

 阿波踊りの歴史は四百年以上。一五八七年、蜂須賀家政公が徳島入りし、藍や塩などで富を蓄積した頃、一段と盛んになった。二拍子のリズムに乗り、男性は膝を開いて腰を低く、女性は手を高くあげてしなやかに舞う阿波踊りは、どことなく、サンバに似ている。
 レプレーザでは三十年近く前、徳島出身の藤岡英吉さん(六二、愛知県在住)が指導を開始、一時は中断したものの、八九年の再開以来、一度も途絶えたことはない。九五年には「レプレーザ連」として総勢三十五人が徳島入り、本場の阿波踊りに触れた。
 八月十七日、カンポス・ド・ジョルダンの桜祭りにも出演したレプレーザ連は、いまや日系イベントのアイドル的存在。しかし、二〇〇〇年、藤岡さんが日本へ行くと、主導者不在のため存続の危機にさらされた。

 存続の危機

 「どういう風に運営をしていたか、誰も知らなかったのよ」と、最近から連絡調整係を務める吉田照美さん(五四)。「やめようか・・・と話し合ったこともあった」と打ち明ける。試行錯誤をするなか、責任者に浅見アメリコ浩嗣第二副会長が落ち着き、レプレーザ連は命をつないだ。
 中高等学校教諭で現指導者、長井アメリア靖枝さん(五五)も、子どもたちをまとめるのに一苦労だ。「三、四世の六歳から二十六歳が主体。何も日本文化について知らない子どもたちに教えるのは大変」と深いため息。
 そんな大人たちの気持ちを知ってか知らずか、子どもたちは練習中におしゃべりを始める。アメリアさんが「もー、ぐじゅぐじゅ話をしないのー!」と大声を張り上げてもお構いなし、かえって、怒られるのを楽しんでいるようだ。

 新たなる挑戦

 全体の構成はアメリアさんが指導するが、細かい踊りに関しては、日本でも踊った経験のある古賀アンジェリカさん(一八)が男踊り、下瀬ユキエさん(一八)が女踊りの手本を見せる。「学校を休んでまで来てくれる」とアメリアさん。「なんだかんだ言っても、みんな、ついてきてくれる」と笑顔を見せる。
 レプレーザに八日夜、コローニア会館から練習に訪れた松村幸男くん(一一)、ひろしくん(九)、ゆうぞうくん(七)の三兄弟。母親の恵子さん(四一)は、「子どもたちが阿波踊りを見て気に入り、練習に参加するようになった」と語る。ゆうぞうくんに、「おもしろい?」と聞くと、はにかみながら「うん」と頷いた。
 現在、レプレーザ連では、練習に「YOSAKOIソーラン」を取り入れることを検討中。「YOSAKOI出演の打診があったけど、その時はまだ、新しいことができるかどうかわからなかった」と吉田さん。しかし、いま、レプレーザは前向きに導入を考えている。
 歴史ある阿波踊りと新進気鋭のYOSAKOIソーラン――。レプレーザ連は新たなる挑戦へ、一歩一歩進み始めている。
(門脇さおり記者)
=おわり=

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