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「グローボ・レポーター」国外在住ブラジル人特集=世界の〝デカセギ〟事情(5)=ブラジル人学校の寂しい日々=愛情に飢える子どもたち

12月11日(木)

 デカセギをしている親たちは、重労働ながらも高給を得ることで、心の矛盾を片隅に追いやることができるようだ。しかし、子どもたちにとって、いつも問題ないとは限らない。日本で最も大規模なブラジル学校、鈴鹿市のアレグリア・デ・サベール校には児童生徒四百五十人が通学。両親が仕事に忙しく家にいないため、愛情に飢えた子どもたちは学校の教師を親代わりに慕う。
 「子どもたちは、私のことを『先生』と呼ぶが、時々、『お父さん』と呼ぶこともある」と、教師のレアンドロ・コシコウ・クーニャ・リーマは明かす。

 子どもの中の日本

 子どもたちがブラジル文化に親しみを持つよう、学校ではブラジルの祭りや祝日が記されたカレンダーを使用。レアンドロは、「ただ二万三千キロ離れているだけであって、ここはブラジル」という。
 東洋人の顔を持つブラジル人。多くは日本移民の孫やひ孫たちだ。一九〇八年、笠戸丸に乗船して七百八十一人の日本移民がブラジルに渡った。現在、ブラジルの日系人の数は百四十万人といわれ、世界最大の日系コロニアを築いている。
 「お母さんのお父さんは日本人よ。おじいさんは日本語しか話さないのよ。私たちはね、ちょっとだけ、おじいさんが言っていることが分かるの」と、ブルーナ・コルテス・ラモス。
 しかし、ブルーナはポルトガル語を書き、両親が話す言葉を習っている。「A beterraba caiu da cesta(ベテラーバがかごから落ちた)」と少女は、教科書を開いて元気よく読む。
 ここ十年間で日本のブラジル人コミュニティーの人口は六万人から二十八万人へと拡大、ブラジル学校は三十二校に増えた。子どもの教育問題は解決したかのようにみえるが、現実はそうではない。

 青少年犯罪

 大勢のブラジル人の子どもたちが学校に通っていない。デカセギの親全員が千五百レアル相当の月謝が払えるわけではないからだ。その上、日本の公立学校に通学するのはかなりの困難をきわめる。
 子どもたちは学校の外で、街をさまよう。親たちは家の外で、仕事に縛り付けられている。そして、青少年は犯罪に走る。
 「青少年犯罪の増加で、警察と日本社会は外国人コミュニティー内で起きる犯罪を予防する相談所を発案した。文化や言語など、外国人が分からないものは、彼らにとっても、最も難しいことだ」と訴える犯罪予防センター所長、アデウソン・シウヴァ・デ・ブリット。
 彼は、物理学を卒業後、法律を学び、書類手続きや日本語翻訳業に転身した人物だ。「日本の青少年犯罪の三分の二に外国人が関わっているとされる。残念なことに、ブラジル人はその割合が多い」という。
 ブラジル人や日本人の路上生活者にスープの援助を施すことが日課のエヴァリスト・ヒガ神父は、「私の最大の心配事は子どもと若者たち。仕事で頭がいっぱいの親たちは、子どもにあてる時間がない。新聞では青少年の犯罪増加が叫ばれている」と懸念する。
 エヴァリスト神父のもとでスープを作るボランティアにコンピュータ教室経営者、ファビアーノ・ヒグチもいる。彼は、犯罪だけがデカセギが困難に直面した時の答えではないことの実例だ。
 「ここの生活のすべてに価値がある。私がこの二十四年間で築き上げた人生は、ブラジルではできないことだった。経験や困難は、うまく利用すれば、素晴らしい人格を形成することができる」とファビアーノは自らの体験を踏まえながら語った。
(つづく)

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