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「グローボ・レポーター」国外在住ブラジル人特集=世界の〝デカセギ〟事情(3)=領事自ら密入国斡旋=続く不法移民の悲劇

12月9日(火)

 不法就労していた夫が留置場に収容され、悲嘆に暮れていたブラジル人女性、マリア・ド・カルモ・アモリン。最初の取材から一ヵ月後となる十月、グローボ・レポーター取材班は再び彼女に会った。四人目の子ども、ブレンダが生まれ、父親はブラジルに強制送還されていた。父親はインターネット画面を通して、初めて娘の顔を見た。父親はいま、ボストンから一万キロ離れたゴイアス州アナーポリスにいる。強制送還されながらも、父親はアメリカに戻る希望をいまだ、捨てていない。

 現代の奴隷売買

 移住、不法就労、逮捕、そして、強制送還――。皮肉なのは、かつて、ブラジルからの移住は、アメリカ人の手によって進められていたことだ。一九四〇年代、ブラジル政府はワシントン同意書に署名、ゴヴェルナドール・ヴァラダーレス市が太平洋戦争に対する軍需協力のため召集され、雲母や絶縁体、製鉄炉用の材木を供給した。
 グローボ取材班は在米のブラジル領事にインタビューを試みた。何人かの領事に接触した結果、匿名を条件として一人が取材に応じてくれた。彼は自らを一人の企業家とし、労働者売買で多くの金を得る手口を包み隠さず暴露した。
 旅費や請負先の斡旋まで含め、一万ドルを請求、人々には本人確認ができないような偽査証を持たせる。サンパウロからアメリカ・テキサス州境の、砂漠が広がるメキシコの街まで彼らを移し、そこで、アメリカ密入国の賭けにでる――。
 「密入国者一人につき、五千ドルの稼ぎがある。月平均で四十人、二十万ドル。自分の仕事は不法行為だとわかっているが、罪の意識を感じない。簡単に金が手に入るようになると、止めることは難しい」と、領事は臆面もない。

 一通の悲報

 密入国に成功する者もいれば、失敗する者もいる。販売人、ギウマール・ドス・サントスは一年前、「アメリカに行く」と言い残し、家を出た。その後、音沙汰がなく、心配した家族が方々に尋ね回った結果、ブラジリアから一通の電報が届いた。
 「私たちが最も聞きたくなかったことが電報に書いてあった。義兄弟の遺骨が見つかったと…」とギウマールの義姉妹。
 「彼が旅立った日の午後、門のところにいた私は、心にある衝撃を感じた。まるで、二度と会えないだろうと予感していたみたいに」とギウマールの父親、ジョゼー・アウヴェス・ドス・サントス。
 ギウマールはアメリカ密入国をしようとして命を失った。遺体はメキシコ国境の砂漠地帯で発見されたという。現在、ギウマールの家族は遺体を引き取るための五千ドルを必要としている。ギウマールの両親へのせめてもの慰めだ。
 「とても苦しい。一年四ヵ月の間、私は不安にさいなまれている」と母親、マリア・マルチンス・ドス・サントスは声を落とした。
(つづく)

■世界の〝デカセギ〟事情=グローボ局が特集番組=問われる国外就労の功罪=「ブラジル人とは何か?」
■「グローボ・レポーター」国外在住ブラジル人特集=世界の〝デカセギ〟事情(2)=ドルが支える町 G・ヴァラダーレス市=6人に1人が外国就労
■「グローボ・レポーター」国外在住ブラジル人特集=世界の〝デカセギ〟事情(3)=領事自ら密入国斡旋=続く不法移民の悲劇
■「グローボ・レポーター」国外在住ブラジル人特集=世界の〝デカセギ〟事情(4)=奴隷のように働く毎日=珈琲輸出額上回る送金
■「グローボ・レポーター」国外在住ブラジル人特集=世界の〝デカセギ〟事情(5)=ブラジル人学校の寂しい日々=愛情に飢える子どもたち
■「グローボ・レポーター」国外在住ブラジル人特集=世界の〝デカセギ〟事情(6・最終回)=ブラジル人であること=帰りたい、家族のもとに
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