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【2020年新年号】東京五輪の男子サッカー優勝国を本紙記者が予想=期待集まる前回金メダルのブラジル=豊作の日本代表が大健闘も?!

マンチェスター・シティで活躍するガブリエル・ジェズスも、本来は23歳以下枠で出られるはずだが、、、(Football.ua)

 2020年の夏季五輪は56年ぶりの東京開催となる。様々な競技への興味がつきないが、ブラジルとしてはやはりサッカーを欠かすわけにはいかない。そこで、本紙きってのサッカーファン、井戸規光生記者と沢田太陽記者が今回もサッカー対談を行い、前回リオ大会で待望の金メダルを獲得したブラジル五輪代表と、日本代表の活躍を占ってみた。

ブラジル五輪代表の戦力はどの程度?

【井戸】今年の東京五輪男子サッカー、1月には早速南米予選がはじまりますが、ここまでブラジル五輪代表どうですか?
【沢田】ジャルジーネ監督になって、戦績は良いんだよね。6月のトゥーロン国際大会では優勝もしたし。
【井戸】その後はコロンビア、チリに勝ち、ベネズエラにもアメリカにも勝った。日本とアルゼンチンには負けましたが。
【沢田】トゥーロン国際からここまで、大体メンバーも固定されているし、急に誰か違う選手を呼ぶとかもなさそうだしね。
【井戸】連携面の不安もない、と。
【沢田】うん。メインの選手も主にブラジル国内の選手だから、元々重要な試合の少ない時期だしね。唯一気になるのは、ディフェンダーかな。ヨーロッパの選手が多いからね、そこだけは。
【井戸】たしかにそうですね。
【沢田】たとえばセンターバックのリャンコ(トリノ)とか。サイドバックのエメルソン(ベティス)なんてレギュラーだからね。ヨーロッパはリーグの真っ最中だから、各所属チームが五輪代表に戻してくれるかが心配だね。
【井戸】その不安はありますね。ブラジル国内でも各州選手権がはじまりますけど、CBF(ブラジル・サッカー連盟)が強制的に選手を出させるでしょう。

マテウス・エンリケ(グレミオ、Divulgação)

【沢田】攻撃陣から中盤、ボランチまでは、アントニー(サンパウロ)、ぺドリーニョ(コリンチャンス)、ブルーノ・ギマリャンエス(アトレチコ・パラナエンセ)、マテウス・エンリケ(グレミオ)と大体国内。
 センター・フォワードのマテウス・クーニャはドイツ(ライプチヒ)で一応気になるけど、チーム内じゃ控えだから大丈夫かな。
 あと、フォワードのパウリーニョもドイツでプレーしているけど、所属のレヴァークーゼンでそんなに出番があるわけじゃないから大丈夫かな。
【井戸】ヨーロッパの選手は所属チームが出してくれるかどうかが心配なんですよね。CBFが呼びたい選手を全部呼べたらすごいチームになるんですけどね。
【沢田】それが認められたら、フル代表とほぼ同じメンバーだよ(笑)
【井戸】ロドリゴ(レアル・マドリッド)とか。
【沢田】彼もそうだし…ヴィニ(ヴィニシウス・ジュニオル、レアル・マドリッド)、出せないかな?

2018年、サントス時代のロドリゴ(現レアル・マドリッド、Douglas Teixeira from Santos, Brasil)

【井戸】皮肉なもので。少し前ならレアルのレギュラーは(19歳の)ヴィニシウスで(18歳の)ロドリゴの方が控えだったんですけど、今チーム序列でロドリゴが抜いちゃいましたからね。
【沢田】彼らが加わると強力なんだけどなあ。レアルにいても出番がそんなに多いわけじゃないんだし。

五輪より厳しい南米予選

【沢田】あと、南米予選で足元をすくわれないか、という危険性もなくはないよね。
【井戸】南米予選は1月18日から2月9日まで。この大会でブラジル代表は2位以内に入らないといけません。

2018年、フラメンゴ時代のヴィニシウス・ジュニオル(レアル・マドリッド、Agencia de Noticias ANDES)

【沢田】まずはパラグアイ、ウルグアイ、ボリビア、ペルーのグループで2位以内に入らないと決勝リーグに進めない。
【井戸】決して楽じゃないですよね。
【沢田】そうだね。幸いベネズエラとかエクアドルみたいな、最近の若手育成のいい国が別グループなのは助かった。なんとかウルグアイと共にトーナメント行きを決めたいところだよね。いざ勝ち抜いてしまえば、五輪の方が楽だもの。
【井戸】興味深いことを言いましたね。つまり、南米予選は各国のレベルが高いにもかかわらず、出場枠が2しかありません。これが五輪本番になると、ヨーロッパが4カ国だけ。それほど強い地域でないのに北中米カリブが2カ国。そしてアジアは日本を含めて4カ国もある。五輪でメダルを獲るより、南米予選で2位以内に入る方が厳しいかもしれないですよね。

オーバーエイジ枠で出場するのは誰?

【沢田】そう、南米予選を勝ち抜く方が五輪本番でメダルにからむより楽だよ。あとは…フランスがエムバペ出してくるとかしない限りは(笑)
【井戸】あんなすごい選手が、五輪出場資格(1997年1月1日以降生まれ)を満たしていますからね。彼は「五輪に出たい」と言っているみたいですよ。
【沢田】そうじゃなくても、あの国はフル代表になれない若手にも有望選手たくさんいるのに。
【井戸】アフリカ予選はもう終わっていて、エジプト、コートジボアール、南アフリカが出場を決めました。エジプトからはサラー(リバプール)がオーバーエイジ枠(OA・96年までの生まれで3人まで出場可)で出場を希望しています。
【沢田 エジプトにとってのサラーは、ブラジルにとってのネイマールくらいの大英雄だからありえるよね。
【井戸】ブラジルはOA枠、どうですか?
【沢田】(前回出場の)ネイマールはもう出ないよね、さすがに。さっきも言ったけど、ディフェンダーかな。
【井戸】僕はキーパーでアリソン(リバプール)かエデルソン(マンチェスター・シティ)が出たらかなり強いかと。
【沢田】それは最高だね。ボランチにカゼミロ(レアル・マドリッド)でも入れば、相手、抜けないよ。あとフォワードね。
【井戸】センターフォワードは、オーバーエイジじゃなくてもガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)が年齢対象選手ですね。
【沢田】そうなんだよ。ジェズス出して、オーバーエイジでガビゴル(フラメンゴ)なんていいかも。
【井戸】リオ五輪と同じコンビで経験値も生きますしね。
【沢田】あと、フラメンゴと言えば、去年大活躍したMFのジェルソンも年齢制限にひっかからないで出られるよね。五輪代表ではまだ試合に出てないけど。実現したら素晴らしいね。
【井戸】フラメンゴに所属のままなら、ありえる話ですよね。

ブラジルは2連覇なるか?

【井戸】ずばりブラジルの2連覇の可能性はどうですか?
【沢田】さっきも言ったようにフランス次第だね。あそこは選手層が豊富だから。
【井戸】それはスペインも同様ですよね。日本もメダル争いには絡んでほしいけど。
【沢田】日本もかなりのものだよ。だって、去年はブラジル相手に1勝1敗なんだから。
【井戸】そうですよね。去年は日本とブラジルは2回戦っています。6月のトゥーロン国際の決勝ではブラジルが勝って、10月にレシーフェで行われたの国際親善試合では日本が勝っていますからね。次に当たったら好勝負を期待したいですね。

(※)ブラジルは12月中旬に発表した、南米予選に挑むメンバーの中から何人も所属チームが招集拒否されるメンバーが出て、12月下旬にメンバーを発表しなおした。元からレアル・マドリッドに招集を断られていた、ヴィニシウス、ロドリゴ、ミリトンに加えて、エメルソン(レアル・ベティス)やドウグラス・ルイス(アストンビラ)、ガブリエル・マルチネッリ(アーセナル)ペドロ(フィオレンティーナ)、リャンコ(トリノ)まで招集できず、2019年の強化試合の意味が失われる結果に。南米予選突破に向けて黄色信号だ。

2019年10月にレシーフェで行われたブラジル戦に日本は勝利した(右は日本の中山雄太)/CBF

ブラジルに勝利で、強化が進む日本代表

【井戸】ではつづいて、日本について話していきます。
【沢田】2019年日本は、6月にトゥーロン国際という大会に五輪代表の控えクラスが出て、ほぼ同じ時期に開催されたコパ・アメリカには、五輪代表のレギュラークラスが中心となって出場した。
【井戸】控えクラスで挑んだのに、トゥーロン国際では準優勝。チリには6対1で勝っているし、メキシコにもPK勝ち、決勝戦でブラジルには惜しくもPK負けでした。その後9月にはメキシコに遠征してメキシコに引き分け、アメリカに負け。10月には遠征先のブラジルに3対2で勝っています。
【沢田】ただし11月には広島にコロンビアを迎え撃って、0対2で負けたんだ。年齢制限のないフル代表に食い込んでいる堂安(PSV)や久保(マジョルカ)が五輪代表に回って期待されたんだけど…。
【井戸】連携不足がたたりました。今年7月23日の開幕までそんなに一緒に練習できる時間も多くないし不安です。
【沢田】日本五輪代表は、旧年12月上旬に東アジア選手権、12月末には長崎にジャマイカを迎えての親善試合があったけど…。
【井戸】この対談が行われたのが旧年の12月初旬ということで結果が載せられません。読者の皆様お許しを。(※東アジア選手権では韓国に敗れ2位、長崎でのジャマイカ戦は9-0で勝利)。

【沢田】2020年早々には東京五輪の出場権を争う大会、U23アジア選手権がタイで開催されるね。
【井戸】五輪開催国の日本は、自動的に五輪に出られるため、U23アジア選手権で3位以上に入って出場権を確保する必要はありませんが、チーム強化のために、U23アジア選手権には出場します。
【沢田】なんとか今年7月の五輪本番までに、久保や堂安、冨安(ボローニャ)なんかも、チームにうまく組み込まなきゃね。

欧州組が10人以上、史上まれに見る豊作世代

19年6月にブラジル開催のコパ・アメリカに出場した久保に伯字メディアも注目している(グローボエスポルテサイトより)

【井戸】実は日本もブラジルセレソンと同じ悩みを抱えています。それは久保、堂安、冨安だけでなく、欧州クラブ所属の選手がこんなにいること。板倉(フローニンヘン)、前田(マリティモ)、中山(ズヴォレ)、食野(ハーツ)、三好(アントワープ)、菅原(AZ)安部(バルセロナB)。
 五輪サッカーは欧州で重要視されていないし、欧州のクラブチームには五輪代表に選手を出す義務がないんです。
【沢田】まあでも、日本は地元開催だし、日本サッカー協会(JFA)がお願いすればなんとかなるんじゃないかな?
【井戸】「東京五輪は8月8日には終わる。欧州主要リーグの2020/21シーズンには重ならないので、なんとか…」とやるしかないですね。
【沢田】それでも、「五輪で怪我されたらかなわん」と断られても文句は言えない。リストの中で1人、クラブが断固拒否しそうなのがいる。
【井戸】誰ですか?
【沢田】ボローニャの冨安だよ。一昨年ロシアW杯後の新体制からフル代表でもレギュラーの彼はボローニャからの信頼度が高い。2019/20シーズンに新加入なのにもうレギュラー奪ってイタリアリーグ、セリエAで活躍中。
【井戸】イタリアと言えば守備意識の高い国。そこの中堅チームで、21歳でレギュラーですもんね。チーム内で重宝されている選手ほど、五輪に呼びにくい。
【沢田】久保はどうかな? まだ18歳と、次のパリ五輪(2024年)にも23歳以下の枠で出場できるくらい若いのに、東京五輪世代最高のタレントである彼だけど、今はレアル・マドリッドからマジョルカに貸し出されている状態。
【井戸】つまりマジョルカに決定権はない。また、東京五輪のころ、どこに貸し出されているか? レアルに戻っているかも定かではない。また、例えレアルに戻ったとしても、面子があるから、「君が頼りだ。五輪なんか行かないで」と言うとも思えないってことですよね。
【沢田】そう。それにレアルは「久保が東京五輪で活躍してメダルも取れば箔がつくよ」みたいな、JFA側の説得に耳を貸しそう。マーケティング的側面も重視するチームだから。
【井戸】レアルは、サッカーチームの枠を超えたブランドですからね。もちろん彼は日本にとっても宝。JFAどころか、JOCも、テレビ局、広告代理店も彼の東京五輪出場を切望しているはずです。
【沢田】PSVの堂安も相当なもんだよ。PSVはオランダでアヤックスに次ぐ名門チーム。
【井戸】板倉はコパ・アメリカで評価を上げて、オランダでも試合に出ています。ポルトガルでプレーする前田はスピードと決定力に優れたFW。中山は昨年6月のコパ・アメリカでいったん評価を下げましたが、その後10月のブラジル遠征で目の覚めるようなミドルシュートを叩き込みました。
【沢田】これまでの五輪代表とはだいぶ変わって欧州組が多いね。20台前半からドンドン飛び出して、頼もしいよ。だからこそなんとかベストメンバーをそろえて戦いたいね。東京五輪開催のタイミングに、豊富な人材がそろったね。
【井戸】これは一朝一夕のものじゃないですね。10年以上前から継続してJFAが才能の発掘、育成に取り組んできた結果です。

予想される日本のメンバー(オーバーエイジ枠を除く)

注目のOA枠、本田の選出なるか?

【井戸】ではOA枠はどうですか?
【沢田】昨年6月のコパ・アメリカでは、五輪世代を中心としながらも、年齢の高い選手も呼んでいた。それが、GK川島、DF植田、MF柴崎、中島、FW岡崎たち。これがヒントになるのかな。
【井戸】中島、柴崎はコパ・アメリカでは活躍しましたが、中島はポルトガルで出番を減らしていて、柴崎は所属のスペイン2部クラブが、なんと3部落ちの危機。
【沢田】昨年11月の、フル代表の親善試合ベネズエラ戦で1対4と大敗して、柴崎が「自分のせいです」なんて言っていたのが気になる。調子が良くないと自覚しちゃっているのか、責任感から出た言葉なのかは分からないけど。
【沢田】チャンピオンズリーグで活躍している南野(リバプール)やヨーロッパリーグで活躍の鎌田(フランクフルト)も呼んでみたいけど、

19年のコパ・アメリカのウルグアイ戦。年齢制限のないウルグアイ相手に、五輪世代中心の日本は引き分けた(右は2得点の三好・UOLサイトより)

【井戸】2人とも攻撃的MFで、五輪世代で先発の11人を考えたときに、補強しなくちゃいけないポジションかと言えばそうではないです。既に久保、堂安だけでなく、19年のコパ・アメリカでウルグアイ相手に2ゴールを決めた三好もいますし。
【沢田】その観点からだと薄いのはむしろDFだね。植田、昌子なんかがいいな。GKもふくめてバランスよくチームのセンターラインにしっかり芯が通るようなOAの使い方をしてほしいね。
【井戸】では、ビッグマウスのMF本田(1月1日現在無所属)の大逆転召集の可能性はどうですか?
【沢田】昨年夏から秋にかけて、所属チームも決まらない状態で、「東京五輪に出たい」といい続けてきたよね。
【井戸】周りが失笑しても、「みんな何回俺に見返されたら気が済むの?」と全く気にしていません。「下がり気味のMFにポジションを変更して、前の久保や堂安を活かす」んだとか。
【沢田】森保監督がフィテッセでのプレーを見て(※本田は昨年11月に加入したばかりのフィテッセを12月に退団。新年1月1日の時点で所属チームがない)、必要と思えば呼ぶ。思わなければ呼ばない。本田本人も望むところだと思うよ。
【井戸】そうですね。客観的に見れば、本田のOAでの五輪代表入りの可能性は高くない。でも本人は全く気にしないで、プレーで自分の価値を証明する覚悟があるわけですから、残り半年のプレーを見守りましょう。

1968年メキシコ大会以来、メダルに手届くか

【沢田】最後に、日本への期待、大会展望だけど
【井戸】2020年正月の時点で、まだ南米代表、アジア代表も決まっておらず、出場16チームがそろっていないので、なんとも言いにくいですが。
【沢田】ドイツ、フランス、スペイン、ルーマニアが出場することが決まっている欧州は五輪サッカーへの熱意が高くない。
【井戸】6月12日から7月12日にかけて欧州選手権もありますし、OAも呼びにくいでしょう。
【沢田】地元の利、特に真夏の日本の蒸し暑さが日本に有利に働くかもしれない。
【井戸】五輪サッカーはW杯で支配的な、国の序列が崩れやすいですし、1次リーグを突破すればもう次は準々決勝。準々決勝に勝てばベスト4で、銅メダル以上の可能性は単純に75%です。
【沢田】ぜひ1968年のメキシコ五輪以来のメダル獲得を果たしてほしいね。
【井戸】期待しましょう!

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