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《ブラジル》ついに国内で「黒い真菌」確認=サンパウロ州やアマゾナス州で=急がれる感染拡大抑制

マナウスで最初の死者確認と報じる2日付98FMナタル・サイトの記事の一部

 【既報関連】新たな変異株による新型コロナの感染爆発が起きたインドを筆頭に症例報告が急増中で、致死率54%とされる「黒い真菌(fungo preto)」の症例が、ブラジルでも確認されて医療関係者の間に緊張感が走っていると5月31日~6月2日付現地サイトが報じた。
 「黒い真菌」は「ムコール症(mucormicose)」という真菌感染症で、新型コロナウイルスとは直接関係がない。だが、コロナ治療の過程で免疫が低下している人やステロイド剤を多用した人などが感染すると重症化し、鼻や目、脳などが侵される事がある。
 もともと同感染症が見られたインドでの患者は9千人超といわれ、コロナ感染症からの回復期や回復後間もない患者が目が見えにくくなって受診、生命を救うために眼球摘出といった報告が続いている。
 主な症状は視界がぼやける、物が二重に見える、胸の痛みや血の混じった咳、鼻の変色、呼吸困難などで、感染による抵抗力低下や治療薬による血糖値上昇と関係があると見られている。
 今まではブラジルでの症例は稀で、確認済みや確認中の症例は現在でも3例のみだ。一例はサンパウロ市のクリニカス病院が観察中の30代の患者で、持病はなかったが、中程度の新型コロナ感染症に罹患し、治療中だった。
 また、アマゾナス州マナウス市のドウトル・エイトル・ヴィエイラ・ドウラド熱帯医学財団は1日、4月12日に市内の病院に入院後に同財団に転院し、同月16日に亡くなった56歳の男性が同病に罹患していた事が判明と発表した。

ムコール症(mucormicose)の患者(Photo Credit:Content Providers(s): CDC/Dr. Thomas F. Sellers/Emory University, Public domain, via Wikimedia Commons)

 男性はインスリンを使うほどの糖尿病患者で、4月1日にコロナバックの初回接種を受けた。数日後に風邪のような症状と右目の違和感を訴えたが、PCR検査は陰性だった。
 右目はその後、炎症も起こしており、死後に行った検査でムコール症と判明。同財団はオズワルド・クルス財団にサンプルを送付し、コロナ感染症と糖尿病を抱える患者に対応している医師達への警告も発した。
 3例目は、サンタカタリーナ州ジョインヴィーレ市の病院に入院し、5月に手術を受けた52歳の男性だ。男性は2月20日にコロナウイルスへの感染が判明し、治療を受けたが、3月に体力低下などを訴えて入院。ムコール症の症状を呈したため、5月に手術を受けた。男性はコロナ感染前から糖尿病と関節リウマチの治療を受けていた。
 男性の治療を担当した医師は、インドでは以前からムコール症が起きており、ブラジルでは同国のような大量発生は起きないだろうと見ている。
 だが、ブラジル感染症学会(SBI)のマルセロ・シモン氏は、「ムコール症は糖尿病や白血病、臓器移植などで免疫能力が低下している人に起きやすいが、新型コロナ感染症の治療薬や入院措置などが発症例増加を招き得る」と警鐘を鳴らす。その意味では、インドの轍を踏まぬためにもコロナ禍抑制は急務と言える。
 5月の新規感染者は188万6543人、死者は5万9010人で、3月や4月よりは減ったものの、1日現在の感染者1662万4480人、死者46万8199人という数字や、7日間の感染者が6万1467人/日、死者も1881人/日という数字はまだ高止まりで、気は許せない。

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