ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》第3波への恐れの中、ボルソナロ「接種済んだらマスク不要」で非難轟々=「いつまでマスクの囚人になっているのか!」とも=保健相は「検討中」と否定せず

《ブラジル》第3波への恐れの中、ボルソナロ「接種済んだらマスク不要」で非難轟々=「いつまでマスクの囚人になっているのか!」とも=保健相は「検討中」と否定せず

ボルソナロ大統領(Fabio Rodrigues Pozzebom)

 10日、ボルソナロ大統領は「コロナワクチンを接種した人やすでに感染した人は公の場でマスクを外しても良い」と発言し、マルセロ・ケイロガ保健相にもそれを認める意見書を出させようとして物議を醸している。10、11日付現地紙、サイトが報じている。
 この発言は10日、大統領府で観光省のプログラムの開始記念イベントの席で行われたものだ。
 この発言の際、大統領はつけていたマスクを外して、「ケイロガ保健相と話をした。彼は今、ワクチンの接種をした人やすでに感染した人に対して、公の場でマスクを着用する義務がないとする見解書作成の最終段階に入っている」と話した。
 このイベントの後、大統領は自身のSNSでも同じ発言を繰り返した。「私は何の無理強いもしていないのだが、保健相によるとマスクを着用しなくてもよくなるかもしれない。可能性がでてきたんだぞ。いつまでマスクの囚人になっているつもりだ。私に至っては、マスクをしないとサンパウロ州で罰金まで取られそうになっているのだからな」と興奮気味に話した。
 このサンパウロ州での罰金というのは、今日12日に同州で予定している、多数の支持者を引き連れてマスクなしでバイクに乗って行進する車上デモのことだ。5月23日にリオで行い、大問題となったものと同じ内容のもの。政敵でもあるジョアン・ドリア・サンパウロ州知事は「州のコロナ対策の規則を守らねば罰金」と釘を刺している。
 大統領のこの発言に対し、ケイロガ保健相は否定をせず、「大統領は国外での状況も確認している」「現在、すでに接種を受けた人がマスクなしでも大丈夫か、研究しているところだ」と語った。

 ケイロガ氏は7日、CPIでマスクの着用の徹底を委員たちに約束したばかりだった。
 たしかに米国などではすでに、ワクチン接種を受けた人に対し、マスクの着用義務をはずしている。だが米国では、6月10日の段階で1回目の接種を受けた人が52%、2回目を終えた人が43%いるのに対し、ブラジルは1回目が24%、2回目が11%と遠く及ばないのが現状だ。
 医療の専門家は一斉に、大統領の発言に批判的な見解を表明している。上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)での証言で注目された、ケイロガ保健相の下でコロナ対策局長に就任予定だったルアナ・アラウージョ医師は、「大半の人がワクチンの接種を行った状態でないと、マスクを外しても安全とは言えない」と反論。国連の世界保健機関(WHO)もボルソナロ氏の発言の直後、「ワクチンを接種した人もマスクの着用はすべし」との声明を出している。
 翌11日、ボルソナロ氏は再び、同じ主張を繰り返したが、今回は「連邦政府は最高裁によってコロナに関する対策を講じる権利を奪われている」と語り、「マスクを外して良いか否かの判断は知事によるものになる」とトーンを落とした。
 11日は上院のコロナ禍のCPIが医療の専門家を2人招き、科学的な見地から見たコロナ対策や早期治療などについての意見を訊いており、ボルソナロ大統領の見解やコロナ対策の誤りなどが次々に指摘された。
 専門家が指摘した誤りの中には、連邦レベルで効果的な対策が採られなかったことなども含まれており、「適切な対策が採られていたらどの位の人が死なずに済んだと思うか」といった質問まで飛び交った。
 10日の発言後の反発の強さや11日のCPIでのやり取りが、12日の大統領の行動にも影響するかは不明だ。だが、全国各地で集中治療室の占有率が上昇し、他州への患者の移送を必要とする州や、外出規制を強化する自治体も出ている中での現状にそぐわない言動は、支持率調査などでもマイナス要因となって出て来そうだ。

★2021年5月24日《リオ》ボルソナロがバイク大行進デモ=1万人以上集まるマスクなし政治集会=第2波の真っ最中、翌日に死者45万人超えへ
★2021年5月14日《ブラジル》大統領選世論調査でルーラが優位に=ボルソナロ政権の支持率最低に
★2021年5月11日《記者コラム》CPIで追い詰められて過激化するボルソナロ
★2021年4月30日《ブラジル》コロナ死者が40万人に=30万人突破からわずか36日で=欧州議会でもボルソナロ大統領批判続出

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