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《ブラジル》ボルソナロ大統領が国連総会スピーチで波紋=虚偽連発とメディアが批判=クロロキンや7日デモ肯定=支持者向けの選挙演説?

国連でのボルソナロ大統領(Alan Santos/PR)

 21日朝、ボルソナロ大統領がニューヨークの国連総会でスピーチを行った。スピーチでは経済、環境問題、9月7日の独立記念日のデモなどに言及したが、事実を歪めた内容が目立ったと報じられている。また、コロナワクチンを接種せずに同総会に参加した唯一の国家元首だったボルソナロ氏は、現在問題となっているクロロキンによる早期治療を肯定して波紋を呼んだ。21日付現地紙サイトが報じている。
 ボルソナロ氏はこの日の演説前のニューヨーク滞在中から、G20に数えられる国の中では唯一の「ワクチンを打たずに参加した大統領」として国際メディアの注目を浴びていたが、大統領のその姿勢は演説でも反映された。
 大統領は演説の中で、「自分はワクチン接種の支持者で、11月には国民のほとんどが接種を終える」とあたかも熱心に接種政策を展開しているかのように語りつつも、ワクチン・パスポートには反対であると接種義務化に否定的な姿勢を改めて強調した。
 さらに自身が「コロナの早期治療を行った」として、現在、上院のコロナ禍議会調査委員会(CPI)で問題とされているクロロキンによる早期治療を肯定した。
 クロロキンによる治療は効用がないことで問題となっていることに加え、高齢者向け大手医療保険会社の「プレベンチ・セニオル」が7人の死を隠蔽していた疑惑などで問題となっている最中だ。これは同社が運営する病院で、国家研究倫理委員会(Conep)の許可を得ずにクロロキンなどの治験を行い、9人が死亡したのに2人と公表し、しかも、この治験は患者や家族の同意も得ずに行われていたと指摘されている。

 さらに大統領は、矛盾点の多い演説を続けた。政権に関しては、自身の息子たちや前妻がラシャジーニャ疑惑の渦中にあり、自身も関与したとの疑惑の目が向けられているコロナワクチンの不正契約疑惑がありながら、「就任して2年8カ月の間、汚職がない」と言い切った。
 また、国際的に問題になったばかりの9月7日に行われた、自身の支持者による反最高裁デモに関して、「わが国最大の抗議行動」と言い張った。同デモは連邦政府が見込んだ人数の5%ほどの人しか参加せず、自身への不支持率を過去最高の53%に高めた。サンパウロ市でのデモは軍警の集計で12万5千人、全国でも40万を超えないとされている。
 経済に関しても、第2四半期のGDP成長率はメキシコ、チリ、ペルー、トルコなどより低かったにもかかわらず、「新興国の中では最大の成長」と語り、緊急支援金に関しても、実際には昨年度の半額の平均300レアルしか支払いを行っていないのに「800レアル払っている」と言った。
 国際的な関心が強い法定アマゾンの森林伐採に関しても、ボルソナロ氏は「8月は昨年同月比で32%の伐採削減を行った」とだけ語り、今年上半期が過去6年間で最大の伐採量だったことを隠した。
 8月の伐採面積は2日に発表されたものだが、20日には別の機関が「8月の法定アマゾンの伐採面積は過去10年間で最大で、昨年同月比では7%増えた」と発表しており、大きな矛盾が生じている。
 こうしたスピーチの内容を前に、ペルーのペドロ・カスティジョ大統領がスピーチの半ばで総会会場から退席する光景なども見られた。
 この演説に対し、エスタード紙が「国内の支持者だけに向けたもので、事実を多数歪曲している」と指摘したのをはじめ、「国連を来年の大統領選のキャンペーンに利用した」など、国内外で批判的な声が目立っている。

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