ホーム | 文芸 (ページ 12)

文芸

中島宏著『クリスト・レイ』第138話

 あるいはそれは、宗教の力に繋がるものなのだろうか。まあ、宗教といえば、ここに住む隠れキリシタンの人たちにも同じことがいえるとは思うけど、しかし、君の場合は、彼らとは異質のものがあるように僕には思えるから、その辺りが微妙に違うのではないかとも考えている。そこまでの、君の心の深い面を探ろうとするのは、ちょっと行き過ぎかもしれないけ ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第137話

 その手始めとして、ここの植民地の子弟の皆さんに日本語を教えることになったけど、これも、あの、アゴスチーニョ神父がお膳立てをされて、それに私はただ、乗っかっただけということだから、私が積極的に参加したとはいえないし、それほどの貢献をしているという実感はほとんどないといっていいわね。  ただ、ブラジルにもかなり慣れてきた今、さっき ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第136話

 いきなり同化といっても、日本から移民して来た人たちには無理だから、そういう中間的な形を作ることができればいいなと考えているんだけど。まあ、いってみればこれも、理想的な話かもしれないけど、しかし、いずれ誰かがやらなければならないことだし、考えてみたら私が、その一番近い所に立っているような感じだから、これは自分がやるしかないのかな ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第135話

 遥か彼方に遠ざかった祖国は、今の、そしてこれからの私にとっては、直接には関係のない世界ということになるから、そこをいつまでも思い出したり、考え続けたりすることは、私にはあまり、建設的なものとは思えないの。  もちろん、幼少のときから大人になるまで育った国だから、そこで形成されたものは、はっきりと私の中に残っているものだし、それ ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第134話

 特に、このブラジルのように不気味な国では、あら、ごめんなさいマルコス、私たち日本人から見るという意味ね、これは。こういう未知の国では、その強いはずであった意志の力も、だんだん時が経つにつれて弱くなっていき、ともするとそれが押し潰されそうになってしまうことだってあるの。実際に、その圧力に抗し切れなくなって消えていってしまった人た ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第133話

 心配するとすれば、そちらの方がまず、優先されるべきだろうね。真剣に語り合えば、誤解とか曲解というものは、自然に消えていくと僕は信じるし、僕たちもそのぐらいの水準には到達したいと思ってるよ」  マルコスとアヤとの対話は、かなり微妙で重要な局面に入りつつある。  変なガイジンと、変な外国人との交際は、いずれにしても通り一遍のものに ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第132話

 思い切って話してもいいけど、たとえばマルコスがそれを聞いて、よく理解できないとか、理解できてもその考えは受け入れられないとか、という結果になると、やはりこれは話すべきではなかったとして、後で後悔しなければならないことにもなりかねないし。  そんなことだったら、最初から何もそこまで話さなくてもいいということにもなってしまうから、 ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第131話

 ただね、じゃあ、ここにいるすべての人たちが同じ考えを持っているかというと、必ずしもそうじゃないわね。もちろん、それぞれが考えるのは自由だし、この植民地でも、頭から強制するようにして、ここに住まなければならないという規則はないから、その辺はかなりの柔軟性があるといえるわね。  とはいうものの、私のように日本のことよりもブラジルの ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第130話

「ハハハ、、、マルコスも段々、ナショナリズムに洗脳されていくような雰囲気になってきたわね。まず、このブラジルの将来を考え心配するのは、すでに立派なナショナリストといえるわ。まあ、行き過ぎは困るけど、愛国心が徐々に燃え上がるようにして高揚していくのはいいものね。  ブラジルは、移民によって大きく発展してきたことは事実だけど、この辺 ...

続きを読む »

中島宏著『クリスト・レイ』第129話

 まあ、そこに、この国の持つ大らかさと、将来への大きな発展を感じさせる何ものかがあるということになるけど、ここのように、大地に埋没するような世界で生きていたら、そういう瑣末なことも何だか吹き飛んでしまうようにも感じられるわね。  まさにここは、新天地であり、新世界でもあるということなのね。そういうふうに考えると、日本からの流れを ...

続きを読む »