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独断と偏見で選んだ「110周年最大の遺産」

新装オープンした移民史料館の8階。映像を多用した近代的な展示手法になった

新装オープンした移民史料館の8階。映像を多用した近代的な展示手法になった

 なんと早い1年だったか――予想はしていたが、まさに「アッという間」だった。5月にはトラックストという未曽有の大混乱があり、日本進出企業や日系地場企業も大打撃を受けた。それ以降、6月にサッカーW杯ロシア大会、7月に眞子さまをお迎えして日本移民110周年祭、8月から選挙運動開始。9月にボウソナロ大統領候補が刺され、10月に彼とアダジPT候補が残って決選投票となり、国を二分して争った。こんなに色々なことが短期間に起きた密度の濃い年はちょっと記憶にない。
 ようやく訪れた12月――ちょっと一息つきたいところだが、まだ大ニュースがあるかもしれない。「師走」だけに、読者の皆さんもあちこちの忘年会に呼ばれるなど、忙しく飛び回っているのでは。
 思い起こせば1月初めは110周年が幕開けしたばかりで、「果たして皇室から誰か来られるのだろうか」とヤキモキしていた。1月29日に共同通信やNHKが「秋篠宮同妃両殿下の長女・眞子さまが、日本移民110周年でブラジルを訪問されることが検討されている」と報道。ようやく「本当に来て頂けそうだ」との確信が湧いてきた。
 3月には、首都で開催された世界水フォーラムに皇太子殿下がご出席され、地元日系社会と懇談された。また西森ルイス下議がボウソナロ候補を連れて、訪日した。あの時点で、在日ブラジル人の間で彼は圧倒的な人気を博していた。
 4月には「日系4人目の閣僚、ヨムラ・ミウトン氏が35歳の若さで労働大臣に就任」との朗報が駆け巡った。だがすぐに汚職疑惑が起きて辞任し、ガッカリ。一方、ジョアン・ドリア聖市長が110周年の予備会合で、日系社会代表を前にして「コムニダーデでなく、これはデスコンチヌイダーデ(不連続)だ」と言いたい放題だった。
 5月、北パラナに「アサイ城」ができたことは心から祝いたい慶事だった。なんと移民百周年に立ち上がったプロジェクトで、110周年に完成するというのは、まさに執念ともいえる粘り強さだ。ブラジル初の日本式城が、かつて「四大移住地」とよばれたアサイにできたのは、とても感慨深い。
 6月には、サントス日本人学校の地権が連邦政府から地元日本人会に全面返還された。終戦70余年、ようやくこれで「戦後が終わった」と思わせる出来事だった。残念ながら、同日本人会長を長年務めて返還運動を担ってきた一人、上新さんが直前の3月11日、95歳でなくなっていた。コラム子には、上さんが背筋を伸ばして天国で高らかに万歳三唱している姿が目に浮かぶ。
 眞子さまは7月18日から28日まで5州14都市をご訪問され、各地で熱烈に歓迎された。現在ニッケイ新聞ではその時の写真を集めて、眞子さまご来伯記念写真集を、日ポ両語の『日本文化』第9巻として刊行すべく準備中だ。来年1月には出せるはず。皇室とコロニアの絆を記憶として定着させることは、日系人のルーツ意識を新世代に広めるという意味で非常に重要だ。刊行された暁には、ぜひ孫や曾孫にプレゼントしてほしい。
 眞子さまのご来伯に合わせて、移民史料館8階の改装が年初から急ピッチで進められ、実際に間に合ったのも快挙だ。1978年6月18日に、天皇・皇后両陛下(当時は皇太子殿下同妃)、ガイゼル大統領を迎えて開館して以来の大改装だ。費用の大半を拠出したブラジル・トヨタ社の英断は称賛されていい。むろん、ホンダなど他協賛社も大切だ。

「リベルダーデ日本広場」で除幕された記念碑(撮影・望月二郎)

「リベルダーデ日本広場」で除幕された記念碑(撮影・望月二郎)

 眞子さまがご到着された7月18日、ブルーノ・コバス聖市長の署名によりリベルダーデ広場が「リベルダーデ日本広場」と改名された。加えて同24日には州令によりメトロ一号線(青)のリベルダーデ駅が「ジャポン・リベルダーデ駅」に改名された。地図の名前が変わる意義は大きい。
 8月には沖縄移民110周年が本当に盛大に行われた。県人会という意味では、広島、岡山、北海道が母県の大災害を受けて募金活動を繰り広げたことは、本当に素晴らしいことだったと称賛したい。いつまでも「母県にオンブにダッコ」ではいけない。お互いに助け合える関係になるという意味で、一皮むけたと感じさせる活動だった。
 10月の統一選挙の結果、コロニアを主な基盤とする日系政治家の大半が落選した。今回は、ネット利用が許可された最初の選挙活動であり、新しい時代の有権者とのつながりが日系政治家には出来ていなかった。コロニア再活性化を考えることにおいても、ネット利用は避けて通れない課題であり、考えさせられる結果だ。
 コロニア再活性化を考える上で、大変重要な調査が110周年の節目に発表されたことも本当に意義がある。それは12月に発表された人文研による全伯日系団体実態調査だ。今まで曖昧にしか認識されていなかった実態が、白日のもとに晒された。
 調査した437団体のうち「少し困難を抱え、今後どうなるか分からない」が33%も、「大変困難を抱え、実質閉鎖に向かっている」が9%もあり、合わせて42%(約180団体)は不安定な状態にあると分かった。特に後者、閉鎖寸前の団体が9%(約40団体)もあるのは、ほっておけないはず。
 文協が先頭に立って対策を考えるべきではないか。せっかくの調査内容をしっかりと精査し、コロニア活性化に役立てたい。
 110周年実行委員会が中核事業とする「国士館改修事業」は先見性があるし、良いアイデアだ。だが、それが良い遺産になるかどうかは、今後の文協の運営にかかっている。しっかりと年数回の大型イベント活用ができなければ、今までの国士館と同様、ただの赤字事業にすぎない。
 コラム子が独断と偏見で選んだ「110周年最大の遺産」は4つある。(1)サントス日本人学校完全返還、(2)40年ぶりの移民史料館本格改装、(3)リベルダーデ広場に関わる二つの改名、(4)30年ぶりの本格的研究「日系団体実態調査」だ。これだけでも、「110周年は儲けものだった」と喜びを噛みしめたい。
 なおコラム子が担当する「樹海コラム」は、今年は今回が最後。来週は25日(火)がナタルのため、25日付、26日付が休刊となるからだ。なお今年最後の通常号は28日(金)付。その後、新年特別号が配達される。新年の通常号は4日(金)付からの予定。
 では、読者のみなさん、旧年中は御愛読ありがとうございました。旧年中にあの世に旅立った家族、盟友、畏友、同船者らに心からの冥福を共に祈りましょう。そして、今後ともご愛読よろしくお願いします。良いナタル、心穏やかな年末、そして希望溢れる新年を! (深)

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