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身近なアマゾン(23)――真の理解のために=環境破壊を防ぐ行動=国際世論の高まりのなかで

2007年1月10日付け

 乱開発に終止符をうつ軍事行動(1)□
 バババババッ、ビシッ、ビシッ、ビシッ、ビシッ…。
 戦略ヘリコプターから機銃掃射された砲弾が、厚さ三センチもある鉄板に打ち込まれ、まるで障子に穴をあけるような具合で、大穴をあけられたフェリーボートが、十五分程で沈んでしまったそうだ。
 アマゾン支流タパジョス川上流のテーレスピーレス川付近原始林地域での出来事である。ブラジル陸軍航空隊所属の軍用ヘリによって、この秘境テーレスピーレス川周辺の乱開発地域が空襲爆撃され、民間人によって設置された飛行場や機材渡しのフェリーボートが次々に破壊されたのである。この事実を知っているのは、恐らく政府首脳、地元の人達、それに当事陸軍関係者だけではないだろうか。
 この事件は、この地域で大型機械による目に余った乱開発に耐え切れなくなった軍と政府機関IBAMA(イバマ・自然保護省)上層部が、軍隊にその機械施設や空港施設、荷物輸送機関であるフェリーボートなどの破壊の命令を出し、直接の行動を起こしたものと思われる。
 このテーレスピーレス川上流一帯は、さきに開催された[世界国際自然保護会議]において採択された〔北緯十三度から赤道を挟んで南緯十三度までの熱帯地域の開発抑制条約〕の問題地域に含まれる自然公園地域に含まれているそうだ。ブラジルでは〔パンタナル自然公園地域〕と共に、このテーレスピーレス付近の自然公園がその指定を受けており、ブラジル大統領もこの批推書にサインしているという。
 恐らく今回の開発機械の破壊などの軍事行動命令も、この辺の状況から出された命令だろうと想像している。
 何故かというと、大型機械による自然破壊をこのまま放置しておけば、自然保護国際問題にまで発展しかねないような、開発破壊速度だったからだ。
 冒頭から物騒な話になったが、前回も本欄でとりあげた、三年前までブラジルで行われていた為替操作によるマジックによって、ゴールドラッシュが終わりを告げ、その騒動に加わっていた資本家階級が今度は未開発の森林に目をつけて、始まった破壊的な開発事業だったと筆者は考えている。
 ゴールドラッシュが閉塞した状況で、現政権が始まって暫くして、アマゾン全土に焼き畑が蔓延し、世界から森林伐採で非難を浴びることになった。
 一方、前述したブラジルのゴールドラッシュを演じた資本家やその労働者たち、いうところのガリンペイロと呼ばれる人達の大半は、どこに行ったのだろうか。重複するかもしれないが、ここでは彼らがどこへ行って、何を始めたか(筆者の現地を回っていて感じている)足跡を追ってみよう。
 彼らは大まかに分けて、三方向に散って行ったと考えている。
 第一は、彼らが、あくまで目的とする金を追って採取量の多い場所に移動した者と、別にブラジル国内に分散している宝石のガリンポ(宝石採掘場所もガリンポと呼ぶ)に向かった者。金の価格が暴落したといっても、金の価格は一グラムが十二ドル前後という相場は変わっていないわけで、少量では採算に合わないのであれば、その金がもっと大量に採れるガリンポも存在している。そして金以外にもブラジルは宝石の産地としても有名なのだ。
 第二は、大衆を煽って行動を起こす先導者に従って、土地なし農民と自称して、ブラジル奥地のファゼンダ(大農場)に侵入して、土地泥棒的行動に走った者が多数いる。
 現在は、それら土地なし農民と地主のあいだで、戦争状態の地方が多数あり、新聞紙上を賑わせる。大統領の広大な農場も例外でなく、大統領が派遣した警察軍と農民集団が睨み合っている状態もあった。      つづく (松栄孝)

身近なアマゾン(1)――真の理解のために=20年間の自然増=6千万人はどこへ?=流入先の自然を汚染
身近なアマゾン(2)――真の理解のために=無垢なインディオ部落に=ガリンペイロが入れば…
身近なアマゾン(3)――真の理解のために=ガリンペイロの鉄則=「集めたキンのことは人に話すな」
身近なアマゾン(4)――真の理解のために=カブトムシ、夜の採集=手伝ってくれたインディオ
身近なアマゾン(5)――真の理解のために=先進地域の医療分野に貢献=略奪され恵まれぬインディオ
身近なアマゾン(6)――真の理解のために=元来マラリアはなかった=輝く清流に蚊生息できず
身近なアマゾン(7)――真の理解のために=インディオの種族滅びたら=言葉も自動的に消滅?
身近なアマゾン(8)――真の理解のために=同化拒むインディオも=未だ名に「ルイス」や「ロベルト」つけぬ
身近なアマゾン(9)――真の理解のために=南米大陸の三寒四温=一日の中に〝四季〟が
身近なアマゾン(10)――真の理解のために=アマゾンで凍える?=雨季と乾季に〝四季〟感じ
身近なアマゾン(11)――真の理解のために=ペルー国境を行く=アマゾン支流最深部へ
身近なアマゾン(12)――真の理解のために=放置、トランスアマゾニカ=自然保護?改修資金不足?
身近なアマゾン(13)――真の理解のために=クルゼイロ=アクレ州の小川で=狙う未知の魚は採れず
身近なアマゾン(14)――真の理解のために=散々だった夜の魚採集=「女装の麗人」に遭遇、逃げる
身近なアマゾン(15)――真の理解のために=眩しい町サンタレン=タパジョス川 不思議なほど透明
身近なアマゾン(16)――真の理解のために=私有地的に土地占有=貴重な鉱物資源確保目的で
身近なアマゾン(17)――真の理解のために=近年気候変異激しく=東北地方、雨季の季節に誤差
身近なアマゾン(18)――真の理解のために=ピラニアよりも獰猛=サンフランシスコ川=悪食ピランベーバ

身近なアマゾン(19)――真の理解のために=異臭発しても観賞魚=円盤型、その名の意味は?
身近なアマゾン(20)――真の理解のために=ディスカスの自衛方法=筆者の仮説=「あの異臭ではないか」
身近なアマゾン(21)――真の理解のために=タパジョス川の上流に=今は少ない秘境地帯
身近なアマゾン(22)――真の理解のために=ゴールドラッシュの終り=河川汚染もなくなった
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