ホーム | 連載 | 2007年 | 身近なアマゾン――真の理解のために | 身近なアマゾン(28)――真の理解のために=モンテ・アレグレの壁画から=古代日本人の移住を思う

身近なアマゾン(28)――真の理解のために=モンテ・アレグレの壁画から=古代日本人の移住を思う

2007年2月17日付け

 □インディオと日本人〔モンテ・アレグレの壁画から〕
 アマゾン河中流、アマゾナス州の州都マナウスとアマゾン河口の町ベレンのほぼ中間にサンタレンという町があるのは以前の章で述べた。その対岸の山奥で、逃亡奴隷の隠れ部落が見つかった、という話を前回した。
 この土地でまた別の話題が沸騰した。この地方はアマゾン流域でも話題の尽きない場所のようだ。サンタレンの町の対岸にモンテ・アレグレという町がある。この町には日本人移住地もあって、ピメンタ・ド・レイノ(コショウ)やグァラナなどの熱帯特産香辛料が栽培されている町なのだが、このモンテ・アレグレ町から奥深くに入った場所で、古代のインディオが描いたと思われる壁画が見つかっている。
 かなり昔に、任期を終えたアメリカ大統領ルーズベルトが、彼の趣味だったのか、ここのアマゾン地方を探検している。彼が探検したアマゾン河支流のマデイラ川のまた支流に大統領の名前を冠したルーズベルト川という面白そうな支流もある。この川は現在でも秘境の川で、まだ文明が入っていないようなので、ぜひ訪れてみたい川の一つになっている。
 このルーズベルト大統領を記念した研究財団が、アメリカにあり、そのルーズベルト大統領のひ孫にあたる人が中心になって、ここ南米のインディオ文化を熱心に研究している。この一連の発見もこの財団の研究成果だそうだ。
 南米大陸に、有史以前にアジアから渡って来ていた、というインディオは、かなり古い時代、三期に分けて大陸から渡って来たといわれている。地球が氷河に覆われていた三万五千年以前も前に大陸からやってきた人達と、その後さらに一回あったとされている氷河期の約一万二千年頃の間にやってきた人達、それに氷河期の後一万千年から以後に来ている人達と考えられていた。氷河時代に地続きになっていたアリューシャン列島地域を徒歩で渡ってアメリカ大陸に到達し、その後南下して来た、といわれている徒歩ルートが主流をなしていた。
 ところが、最近では研究が進み、どうやらアジアから渡って来たインディオは、ひょっとしたら太平洋を船で横断したのではないか、という実証が盛んに行われるようになった。
 それでは、このサンタレンの壁画が何故、今頃話題になったか。ルーズベルト財団を筆頭として、南米でインディオについて研究している多くの学者の説として、約一万二千年前に終わった氷河期の後、南米に多数のアジア人が渡って来ている、ということが定説になりつつあるのが現在だ。
 このサンタレンの壁画が研究者によって約一万千年位前に描かれたもので、その上、ここからが重要なのだが、このサンタレンの壁画と同様のものが、太平洋のど真ん中のポリネシア地方でも発見されていて、こちらの年代も約一万千年前頃のものである、ということが確認されているからなのだ。
 ということは、ポリネシアに住んでいた民族が、このアマゾン川にも同年代に入っていることの、明らかな証拠となる。要するに、サンタレンの壁画を描いた人間は、ポリネシアからやって来たということで、かなり実証性のある発見につながる、ということで話題になったのだ。
 そういう説明を現地サンタレンで聞いて、ふと日本のことを考えてしまった。日本の東北地方に住んでいた縄文人が二~三千年前に忽然と日本から消えてしまっている、という発掘結果と推論が発表されている。また、最近、エクアドルの研究者が発表しているのだが、日本の縄文遺跡から発掘された土器と、極めて類似した二~三千年前と推定される土器がエクアドル近郊でも発掘されている、という事実があることを聞いた。
 その土器の両方の年代を調べると、大体一致する、と科学データが出ているという。その上、縄文人は弥生人の出現と期を同じくして、日本の土地から、いつの間にか消えているそうなのだ。
 そんなことを考えていたら、縄文人というのは、凄い民族ではなかったか、と思ってしまった。その縄文人の末裔が、この南米大陸で現在も暮している可能性がある、という想像。ここでは詳しくは述べないが、筆者が最近頻繁に訪れているネグロ川上流に住んでいる未開のヤノマミ族あたりが、日本人の血をひいているかもしれない、というようなことを考えている。
 一度DNA鑑定でもできないか、と思ってヤノマミの若い女性に「髪の毛を一本分けてくれないか」と言ったのだが、髪の毛の種類を勘違いされたのか、見事に断られた。若い女の子だったからか、と反省している。
 アマゾン河中流サンタレンで発見されたインディオの壁画の報告から飛躍してしまった筆者の古代日本人移住論、みなさんはどう思われるか。つづく (松栄孝)

身近なアマゾン(1)――真の理解のために=20年間の自然増=6千万人はどこへ?=流入先の自然を汚染
身近なアマゾン(2)――真の理解のために=無垢なインディオ部落に=ガリンペイロが入れば…
身近なアマゾン(3)――真の理解のために=ガリンペイロの鉄則=「集めたキンのことは人に話すな」
身近なアマゾン(4)――真の理解のために=カブトムシ、夜の採集=手伝ってくれたインディオ
身近なアマゾン(5)――真の理解のために=先進地域の医療分野に貢献=略奪され恵まれぬインディオ
身近なアマゾン(6)――真の理解のために=元来マラリアはなかった=輝く清流に蚊生息できず
身近なアマゾン(7)――真の理解のために=インディオの種族滅びたら=言葉も自動的に消滅?
身近なアマゾン(8)――真の理解のために=同化拒むインディオも=未だ名に「ルイス」や「ロベルト」つけぬ
身近なアマゾン(9)――真の理解のために=南米大陸の三寒四温=一日の中に〝四季〟が
身近なアマゾン(10)――真の理解のために=アマゾンで凍える?=雨季と乾季に〝四季〟感じ
身近なアマゾン(11)――真の理解のために=ペルー国境を行く=アマゾン支流最深部へ
身近なアマゾン(12)――真の理解のために=放置、トランスアマゾニカ=自然保護?改修資金不足?
身近なアマゾン(13)――真の理解のために=クルゼイロ=アクレ州の小川で=狙う未知の魚は採れず
身近なアマゾン(14)――真の理解のために=散々だった夜の魚採集=「女装の麗人」に遭遇、逃げる
身近なアマゾン(15)――真の理解のために=眩しい町サンタレン=タパジョス川 不思議なほど透明
身近なアマゾン(16)――真の理解のために=私有地的に土地占有=貴重な鉱物資源確保目的で
身近なアマゾン(17)――真の理解のために=近年気候変異激しく=東北地方、雨季の季節に誤差
身近なアマゾン(18)――真の理解のために=ピラニアよりも獰猛=サンフランシスコ川=悪食ピランベーバ

身近なアマゾン(19)――真の理解のために=異臭発しても観賞魚=円盤型、その名の意味は?
身近なアマゾン(20)――真の理解のために=ディスカスの自衛方法=筆者の仮説=「あの異臭ではないか」
身近なアマゾン(21)――真の理解のために=タパジョス川の上流に=今は少ない秘境地帯
身近なアマゾン(22)――真の理解のために=ゴールドラッシュの終り=河川汚染もなくなった
身近なアマゾン(23)――真の理解のために=環境破壊を防ぐ行動=国際世論の高まりのなかで
身近なアマゾン(24)――真の理解のために=乱開発された土地に大豆=栽培の競合もつづく
身近なアマゾン(25)――真の理解のために=コロンビアとの国境近くで=知人の訃報をきく悲哀
身近なアマゾン(26)――真の理解のために=インディオの「月」の解釈=ネグロ川上流できく
身近なアマゾン(27)=真の理解のために=肥沃な土地であるがゆえに=自給自足生活が営める
image_print