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身近なアマゾン(40)――真の理解のために=インディオが通行料金徴収=先住だから=居留地の所有権?

2007年4月14日付け

 □ブラジルの資源をめぐって、先住民インディオが道路通行料金を徴収
 ブラジルのアマゾンで現在何が起こっているのか、に注目して、自然関係問題を主体に取り上げて、みなさんと共に考えたいと思う。
 先日、ブラジル全国放送で興味深いニュースが放映された。
〔南米大陸の先住民であるインディオの一部族ワイミリ・アトゥアリが先頃、彼らの居留地域を通過する国道に、独自の道路通行料金所を設け、通行料金を徴収し始めた〕という報道。
 このニュース、一般のブラジル人には〔鳩に豆鉄砲〕のような感覚で映ったようで、真面目にテレビを見ていた人達が、横を向いて〔プーッ!〕と吹き出すような出来事だったようだ。
 当事者のワイミリの酋長(代表者)に言わせると、「我が種族は一カ月あたり七万八千レアルなければ人間としての生活ができない。それを通行料金で賄って何が悪い!そもそも先祖代々の我々の土地を掘り返したり、タダで鉱石を持ち去ろうという根性が間違っている」というコメントだった。
 このニュースは、先住民問題、土地所有の地権問題、そして人権問題なんかも含んでおり、真剣に考えねばならない事情が沢山含まれてる。
 以上が〇六年十月までに起こった問題提起だったのだが、その後に展開があって、この問題に含まれている前後関係や、どんな裏があったのかという情報が少しずつ明らかにされてきた。
 本文を書いている時点で(〇六年十一月二十五日)一応の問題の解決合意点に達しているのだそうだ。
 この問題は、マナウスの町から北に三百キロ程上がった、赤道直下の地域に居留地域を持っている〔ワイミリ・アトゥアリ族〕という先祖代々好戦的な種族の土地で発生した問題だ。
 一般的に言って、インディオ居留地域には豊富な地下資源が埋葬されていると言われているが、実際この居留地の中にもバウジッタというボーキサイトの豊富な産出地域があって、世界で有数の埋蔵量なのだそうだ。
 そこでは現在、大規模な積み出し作業が行われているそうで、居留しているインディオにしてみれば、自分たちが先祖から受け継いだ土地から、勝手に資源を持ち出されるのだから、面白いはずはない。その補償として、原石を運び出す鉱石会社からトラック通行料として一カ月一万九千レアルの徴収をしていたのだそうだ。
 その通行料金を、この十月から七万八千レアルに引き上げようとして、独自の料金徴収所を設けたところから問題が発生したという。
 この値上げ額が妥当なものか、不当なものなのか、は筆者には分からないが、そこに問題の出発点があるという。
 採掘会社は値上げを拒否、インディオたちはこの要求が聞き入れられなければ〔戦争も辞さず〕という状況に立ち至ってしまった。
 そこで、この国でインディオを総括管理しているフナイ(フンダソン・ナショナル・デ・インディオ)という法務省直轄のインディオ保護基金の長官が問題解決に乗り出したが、そのレベルでは問題が解決できなかった。双方の要求レベルが余りにもかけ離れれていたのだ。結局、連邦大統領の出馬が必要になった。
 そして、仲介案として「通行料金を毎月五万レアル採掘会社が支払う」という裁定で解決したのだそうだ。
 みなさんはどう思ぅ?
 一八〇〇年代のアメリカ西部劇の世界が、ブラジルでは現在でも現実に起こっているのだ。しかし、ここに現地マナウスの住民の意見というか見方として面白い話がある。
「元来自然の中で、文明を利用していないインディオ達がなぜ一カ月七万八千レアルもの金がいるのか、だれがそんな額のお金を必要としているのか」という話である。なるほど自給自足のインディオにはお金はいらないはずである。インディオが銀行口座を持っていて、そこに毎月高額のお金が振り込まれている、という不思議な話である。
 筆者にはそのカラクリが分からない。いろいろ想像できるが、誰かが裏で何かをしている、というのがもっぱらの噂だった。つづく     (松栄孝)

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